倒産法の枠組み内において、生産ユニットの譲渡・売却は企業家、労働者、供給者、顧客、会社の債権者など、複数の利害関係者の利益を満たすことが可能となるため、非常に興味深いテーマである。当該譲渡は、事業構造及び雇用維持を可能とするツールの一つとして構成されており、スペイン倒産法改正条文を承認した2020年5月5日付勅令法第1/2020号の第2附則において言及されている。(以下「新倒産法」という。)
生産ユニットの概念の定義は、当該概念に従業員等の人的要素が含まれるかどうかでは、譲渡がもたらす法的影響が大きく異なるため、些末な問題とは言えない。2003年11月20日付欧州連合司法裁判所判決において記載された意見の冒頭にて、生産ユニットとして存在するためには、従業員の人的資源もこれに含まれなければならない、としている。しかし、例えば2018年8月7日の判決では、フレキシブルな概念の基準を導入し、人的資源を含むことなく、生産ユニットとは、事業経営を可能とする一連の物質的手段であるとみなしており、当該基準を採択することも可能となる。
スペイン法においては、従業員の人的資源は当該概念には含まれないとした、より柔軟な基準がこれまで一般的概念として採用されてきた。法的レベルでは、様々な法規定において非統一的ではあるが、本基準への言及が見受けられる。スペイン労働憲章第44条2項(本質的、もしくは付随的な経済活動の実行のための一連の組織的手段と理解され、そのアイデンテティを維持する経済団体)や、一般税法第44条1項c) (いかなる概念に関わらず、経済活動の所有者の地位にある、もしくは取引の実行者である個人もしくは事業体) 及び、清算手続きを規定した旧倒産法第149条4項 (本質的、もしくは付随的な経済活動の遂行を目的とする一連の組織化された手段と理解される、そのアイデンテティを維持する経済団体)等がこれに該当する。
新倒産法の重要改正点の一つに、生産ユニット概念の正確な定義があり、第1編(債務者の破産)の第2章(破産財団目録)、第6節(破産財団)の第200条第2項 (生産ユニット)では、生産ユニットを本質的もしくは付随的な経済活動に関わらず、その発展を目的とした一連の組織的手段の総称である、としている。同様に、第1章第7節第324条(事業引き受けを含む再生計画案)第1項では、再生計画案には、破産債務者の職業活動または事業活動の一連の資産や権利、又は特定の生産ユニットのいずれかを、特定された自然人又は法人が取得することを含むことができるとしており、当該取得者は、再生計画案にて定められた最低期間は当該事業活動を継続する旨、及び、破産債権者の全員又は一部に対する債務の全部又は一部の支払いを約束することが求められる。
また、第2項では、当該条文自体が生産ユニットの再生計画案にて特定された取得者への譲渡は、倒産法において定められた特別な規則に従うものと定めている。
新倒産法により導入されたもう一つの大きな改正点は、会社の維持の原則と一致して、生産ユニットの廃棄または売却がいつでも実行できる可能性である(第215条にて規定)。これにより、生産ユニットの移転がいつ実行可能なのかを検討することになる。
新倒産法の条文の解釈について、プレ倒産手続きの時期においても、倒産申し立てをする必要なく又は倒産申し立ての前に、生産ユニットの移転が可能とする意見もある。これは、第1編(債権者との交渉開始の届出)第1章(債権者との交渉開始の届出)第2巻(プレ倒産手続きの権利)の第583条(交渉開始の届出)に規定するところを根拠とする。ただし、第583条は、自主管轄に関する法(倒産管財人の選任及び報酬に関する法)等の他の法令と完結させ、又は、統合させる必要があるだろう。
別のオプションは、倒産手続き内で第523条(簡易手続きの強制適用)の規定に基づき、倒産申立ての提出とともに申請を行うとするものであり、債務者が完全に事業活動を停止し、有効な雇用契約がなくなった場合、又は債務者が倒産申立てと一緒に機能中の清算ユニットの譲渡に関する拘束力のある書面による計画を含む清算計画案を提出した場合に、裁判官は簡易手続きを必然的に適用する。
その他のオプションは、倒産手続き内の共通フェーズにおいてである(第306条、第307条及びそれに続く条文)。
別のオプションは、再生計画作成フェーズにおいてである。第324条(事業取得を含む再生計画案)で規定された手続きによるものであり、その第1項において、再生計画案には、破産債務者の職業活動または事業活動の一連の資産や権利、又は特定の生産ユニットのいずれかを、計画案において特定された自然人又は法人が取得することを含むことができるとされており、当該取得者は、再生計画案にて定められた最低期間は当該事業活動を継続する旨、及び、破産債権者の全員又は一部に対する債務の全部又は一部の支払いを約束することが求められることが示されており、第2項においては、生産ユニットの再生計画案にて特定された取得者への譲渡は、倒産法において定められた特別な規則に従うものと定めている。
最後に、その他の考えられる生産ユニット譲渡のタイミングは、新倒産法第416条(清算計画の提出)及びそれに続く条文の規定の範囲での、清算フェーズだろう。
新倒産法により導入されたもう一つの改正点は、労働債務の承継に関する取り扱いである。第221条(企業の承継)はその第1項で、生産ユニットの譲渡がされる場合、当該時点で存在する労務債務及び社会保険料債務については、会社の承継とみなすと規定しており、第2項では、倒産手続きの担当裁判官は会社承継の存在を宣言することができる唯一の管轄機関であると規定している。この場合、第224条(未払い債権についての効果)では、「生産ユニットの移転は、倒産債務/破産財団外の債務に関係なく、生産ユニットの譲渡前に生じた債権で、倒産債務者によって弁済がされていないものの支払い義務の移転を伴わない。ただし、生産ユニットに含まれる従業員にかかる労働債務及び社会保険料債務の承継がされる場合は除く」旨が規定されている。同様に、同条文は、倒産担当裁判官が、これらの債権について、生産ユニット取得者が、生産ユニットの譲渡に先立って未払いとなっている給与や補償金の一部を承継しないことを認めることができると定めている。この場合、それら債務は2015年10月23日付勅令法によって承認がされた改正労働者憲章法に従い、給与補償基金により負担がされる。
現在までのところ、2020年9月1日に施行されたこれらの規則を裁判官がどのように実務に採用していくのか前例が不足しているが、新倒産法により導入されたこれら改正点について、特に生産ユニットの概念の導入と、従前の条文をより良く制度化する規定の点で評価できると結論づけることができる。後者については、生産ユニットの譲渡の商取引での使用を間違いなく助け、倒産手続き中のみならず、倒産手続き前や倒産手続き外でも活用することができるようになることで、会社の維持及び保存の原則に資すると言える。
ボスク・ミレイア(Mireia Bosch)
ヴィラ法律事務所
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2020年9月18日