一人株主会社と会社の本質は一見矛盾しているように思われるが、資本会社法第12条及びそれに続く条項ではそれが可能であることを明確に認めている。
会社設立時から一人の株主が会社の株式または持分のすべてを保有している場合は設立時から一人株主会社となるが、他方で、会社の設立後に、後発的に一人株主会社となる場合もある。
いずれの場合も当該会社と契約を行った第三者保護のため、商業登記所において一人株主の情報が公示され、かつ、当該会社のすべての書類(会社の発行する文書や請求書等)に一人株主会社であることが記されることを、資本会社法は要請している。
後発的に一人株主会社となった場合には、一人株主会社となった日から6ヶ月以内にその旨を商業登記所に登記することが資本会社法により義務付けられている。当該義務を怠った場合には、会社が一人株主会社となった時点以後に当該会社が負担した債務について、一人株主が個人的かつ制限なく責任を負うという、責任制度を資本会社法は定めている。
2016年7月19日付最高裁の判決によれば、当該一人株主の責任制度には、責任を負う場合の要件や原則の適用はされない。つまり、故意または重過失の存在や、契約または契約外の定め、民法や資本会社法の一般的な規定の存在等といった事象は考慮されない。したがって、会社の債務の未払いと一人株主会社であることの登記義務の懈怠との間に因果関係があることは必要とはならない。
このことから、後発的に一人株主会社となった場合にその旨の登記を行うことは非常に重要である。もし行わなければ、たとえ義務の不履行が法の無知または単に看過されたものであったとしても、一人株主は、会社が一人株主となった時点以降に生じた会社の債務について、因果関係の欠如や故意または重過失の不存在について弁明する機会もなく、連帯して責任を負うことが義務付けられる。
ひとつの例として、上述の判決において、一人株主は当該会社と連帯して当該会社の債務について責任を負う旨の判断がなされた。当該会社は倒産手続きの申し立てを行っており、2百万ユーロ以上の負債を抱えていた。しかるべき時に一人株主会社の登記をしていたのならば、この債務を一人株主が個人的に負担することはなかっただろう。
マリナ・イスマエル (Ismael Marina)
ヴィラ法律事務所
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2016年9月16日