2019年11月8日付のスペイン最高裁判所判決は、法定期間内に会社解散義務を履行しない有限責任会社の取締役の連帯責任範囲について概説した。
本件は、解散が義務付けられるような状況に至った有限責任会社において、本件の被上告人である取締役が当該会社の取締役に任命される前に生じた債務について、債権者がその支払いを前任の取締役に代わり、本件取締役に対し請求した場合の有限責任会社の取締役の責任限定に言及している。会社解散事由は被上告人である取締役の前任者の任期中に生じている。
まず第一審である商事裁判所は、原告である債権者の訴えを退け、本取締役には本債務の支払義務はないとした。
第二審、サラゴサ県高等裁判所は商事裁判所の判決を破棄し、本取締役に対し、債権者が主張した債務は会社解散事由が生じた後に発生したものであるが、取締役が債務の弁済連帯責任を負うためには、債務の発生前に役員選任を受諾することを要求していないことを挙げ、取締役は本債務の支払いについて連帯責任を負う、との判断を下した。
取締役はこれを不服として本件を最高裁に上告し、上告理由として、第二審判決は以下の2点においてスペイン資本会社法第367条に違反すると主張した。
a) 本件会社債務の発生が、上告人である取締役が本職に選任された日より前であること
b) スペイン資本会社法第367条を適用するには、債権者は、債務者である清算会社が債務の一部あるいは全部の支払い能力があったことを証明する必要があること
最高裁は、上記のb)にて陳述された要件はスペイン資本会社法第367条に基づき取締役の責任を追及する場合は適用可能ではなく、同法第241条に基づく個別責任による行動により適用されるものであるとし、これを拒否した。その上で、スペイン資本会社法第367条に基づき取締役の責任を認定するには、会社が解散事由に該当するにもかかわらず解散手続き申立てを行なっていなかった事実、及び会社の負債が会社解散事由の発生日より後に生じた事実で足りるとした。
しかし、a)については上告人である取締役に同意する判断を示した。第一に、会社に解散事由が生じた場合、スペイン資本会社法第367条は以下の取締役の義務を規定する。(a) 2ヶ月以内に株主総会を招集し、解散決議を採択すること、(b)株主総会が成立できなかった場合、同日から2ヶ月以内に裁判所命令解散を申請すること、(c)株主総会で解散決議が採択されなかった場合、または否決された場合、株主総会の開催日から2ヶ月以内に裁判所命令解散を申請すること。
上記の法律上の義務の不履行による一般的な帰結として取締役の連帯責任が生じる、としている。しかし、2013年12月2日付スペイン最高裁判決第731/2013号は、「上記法定義務を履行しない取締役は、会社解散事由が生じた後に発生した債務についても連帯して弁済する義務を負うが、取締役退任後に発生した債務についてはその限りでない。」としていることに留意したい。
本案件は、前任の取締役が会社の解散(破産手続き)を求めたことがなく、債務の発生が会社解散事由発生後、かつ取締役選任前である場合に関し、会社解散事由が発生後に選任された取締役の責任が争点となった。
会社解散または破産申立義務を履行しない取締役に対するスペイン資本会社法第367条が規定する責任の根拠は、「弁済義務の履行に十分な資産保証を享受することなく契約を締結した債権者に対し生じるリスク」にある。しかし本最高裁判決は、会社が解散事由を抱える中で役員変更があった場合、新取締役は解散手続きを開始するまでに2ヶ月間の猶予を有し、上記第367条が規定する義務を履行しない場合に限り、本取締役選任後に発生した会社の債務について連帯責任を負うと判断を示し、選任前及び解任後に発生した債務についてはその責任を負わない、とした。
上記の理由により、債務発生時にすでに会社に解散事由がある状態にあり、かつ取締役が新規に選任された場合でも、訴訟物としての債務が取締役就任前に発生したものである場合、最高裁判所は新取締役には本債務の支払い義務はないと結論付けた。
ヴィラ・エドアルド (Eduardo Vilá)
ヴィラ法律事務所
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2019年12月13日