2018年2月26日スペイン最高裁判所判決98/2018号以前は、登記公証局(DGRN)及び地方裁判所では会社の取締役の報酬に関しては、以下に示す二重のシステムが存在するという見解が主流であった。
- 資本会社法(LSC)第217条は取締役の報酬に関して言及し、管理者としての権限、つまり審議、監督権限の実行に対する報酬に関し規定している。
- 資本会社法第249条は取締役会役員の権限委任に言及し、特に業務執行取締役、つまり会社の通常の経営責任者の報酬に関し規定している。
上記の区分に基づいて、取締役の報酬を区別し、いかなる場合も、定款の中に株主総会で承認された年間報酬額の上限を規定する必要があるとしていた。これに対し取締役の中でも業務を執る取締役の報酬額に関しては定款規定の対象ではないし、年間報酬額の上限を株主総会で承認する必要もないとしていた。
しかしながら2018年2月26日付最高裁判所判決98/2018号は、長い間判断基準とされてきた上記システムを否定し、業務執行取締役の報酬額に関しても定款規定の対象であるとし、本年度の株主総会で承認される最高限度年間報酬額を遵守する必要があるとした。
同様に、登記公証局の2018年10月31日の決定は、一人株主によって決断された株式会社の定款の修正の登記に関し、ある登記官が多岐にわたる条文を検閲し、「業務執行に関する取締役報酬制度が規定されていない」ことを理由に登記拒否決定をしたことに対する異議申し立てを認めた。しかしながら、登記公証局の決定は登記官が例証として挙げた登記拒否理由をはねつけ、「通常、慣例として知覚される方法とは一致しないが」報酬制度は定款に規定されているとし、取締役の中でも業務執行者の報酬はフレキシブルであるべきであるとした。
当該決定の興味深い点は、本件の法的根拠第5点目に最高裁判所判決98/2018号第23番の根拠を引用し、定款規定の必要性はある種の柔軟性をもって解釈されるべきであることを反復したことにある。業務執行取締役の報酬額の決定権が取締役会へ帰属するのは、定款の枠組みの中で自治の範囲を認識するためのものと解釈されるべきであると示し、「取締役あるいは業務執行役員の報酬額を常に変化する会社や一般的経済活動の需要に適応することを可能にする」とした。しかしそのためには、法外な報酬額を提示することなく、常に株主の権利を保証することを尊重しなければならないとした。
今後を考えるには本件に続く決定や判決を待たなければならないが、登記公証局の決定は最高裁判所判決第98/2018号の本質から逸脱しておらず、業務執行取締役の報酬は、常に定款の枠組みの中において、柔軟性と自治性が優先されるべきであるという見解が主流になってゆくであろう。
ブランコ・ペドロ (Pedro Blanco)
ヴィラ法律事務所
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2018年11月30日