本稿において欧州司法裁判所(TJUE)が直近に示した、消費者に混乱を与える可能性のある商標の登録及び当該商標登録を行った企業の事業セクターに関する判例について検討する。
本件は、複数の商品及びサービスについてLAGUIOLEの商標登録をした個人について取り扱った事件である。当該申請は欧州知的財産事務所(EUIPO)によって2005年に承認された。
ナイフやスプーン・フォーク等のシルバーウェアといった分野における製品が有名なフランス企業FORGE DE LAGUIOLEは、Laguioleという商標の取消抹消申請を行った。同社の主張は、フランス法によれば、同社の商号が有効と認められる範囲は地域に限定されておらず、したがって、直近の商号使用の禁止を申請する権利が与えられている、というものだった。
2011年、EUIPOは、FORGE DE LAGUIOLE社の商号とLaguiole商標との間に混乱を招くリスクがあるとして、Forge de Laguiole社の訴えを認めた。しかし、Laguiole商標の名義人である個人は、EUIPOの決定の取消しを求めて、欧州第一審裁判所に提訴した。
欧州第一審裁判所はEUIPOの決定を部分的に取り消し、Laguiole商標登録のうち、FORGE DE LAGUIOLEの事業セクター、すなわち、刃物、シルバーウェア及びその類似品の事業セクターに属すると考えられる商品についての商標登録のみを抹消した。したがって、Laguiole商標登録及び指定された事業セクターに属さない商品及びサービスのための商標の使用は認められた。
EUIPOは、欧州第一審裁判所の決定に満足しなかったFORGE DE LAGUIOLEの支援を受け、欧州司法裁判所に対し控訴を提出した。
欧州司法裁判所は、加盟国の現地法による会社の商号保護を評価するにあたって、欧州第一審裁判所は、決定を出す時点における現地司法機関の解釈等、現地法の規定を適用すべきであるとした。したがって、EUIPOがその決定を採用した後に出された現地司法機関の決定を考慮しなければならない(本件においてはフランス控訴審の2012年7月10日付判決が出されている。)。
続けて、欧州司法裁判所は、欧州第一審裁判所は本件に適用されるフランスの法令に従って、Forge de Laguioleがその商号に基づき要求できる保護は同社が行う事業活動の範囲内においてのみ有効であると判断したものと考える、と述べた。
欧州第一審裁判所判決の問題は、Forge de Laguiole社の事業活動の特定を行うに当たる判断基準を明確に述べなかった点である。しかし、これら事業活動の検証にあたって、裁判所はその使用、販売先等の顧客網及び販売方法等を考慮しており、したがって、Forge de Laguiole社の行う事業活動の特定は適正になされたといえる。
結果として、Laguiole商標の抹消をこれらの事業又はセクターの商品と考えられるものに限定したことは正しい。
最後に、欧州司法裁判所はその判決において、実施規則によれば、現行の国内法令のもと会社が上記権利を行使することが認められていること及び国内法令において保護されていることについて、現地法によって証明できることの立証責任は、登録無効の訴えを起こした原告が負うものであると示した。
エステル・ウゴ (Hugo Ester)
ヴィラ法律事務所
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2017年9月1日