スペイン会社法(LSC)第348条bisに規定された条件において、配当を行わない場合、株主(出資者)は会社を退社する権利を行使できることは広く知られている。同様の権利は、配当分配が不十分な場合にも適用される。
しかし、反対する出資者が利用できる救済措置はこれだけではない。前述の第348条bis第1項第2段落では、このような退社する権利の行使は、会社の決議に異議を申し立てるための訴訟や、それに対応する責任を問う権利を損なうことがないと理解されるべきであると規定している。
したがって、総会で配当を行わないことが決定された場合、出資者又は少数出資者グループは、退社する権利を行使するか、株主総会の決定に異議を申し立てるかを選択することができる。前者の場合、退社する権利を行使すると、配当を行わないという戦略を採ることで「厄介な」出資者を排除しようとする多数派の出資者や出資者グループの利益に根本的に資することになり、逆効果となる可能性がある。一方、少数終始者が会社からの退社にまったく興味を示さない可能性も十分にある。その理由はいくつか考えられるが、例えば、会社の価値が上昇中である、あるいは上昇が見込まれている場合、出資者の唯一の目的は、会社が得た利益に参加することで投資に対する見返りを得ることである場合などである。これは資本主義企業における出資者の合理的な願望である。
したがって、出資者がとれる代替手段は、スペイン会社法第204条に基づき、多数の出資者の濫用として決議を争うことである。ただし、これが功を奏するにはいくつかの条件が重なる必要があり、おそらく最も重要な条件は、会社が配当を分配できる健全な財務諸表を提示していることである。
2023年1月11日の最高裁判決では、決算及び配当の決定は総会の権限であるものの、会社の状況や経済状況が配当を許す場合に投資収益を期待する少数派を犠牲にして、多数派による濫用的行為を構成することはできないとした。そして、この原則に従い、総会が採択した配当を行わないという決議の取り消しを命じ、さらに踏み込んで、総会の事後の正式な承認を必要とすることなく、配当を行うべき配当金の割合を定めた。
この判決は、配当を行わないという決定が多数派による濫用である場合、その決定を無効にするだけでなく、総会の介入なしに裁判所が配当を命じることができるという法理を確立した。最高裁は、これは総会の権限を奪うものではなく、少数出資者の権利を効果的に保護する手段であるとみなしている。なぜなら、そうでなければ、 単なる宣言判決で決議を無効にしても配当金の分配にはつながらず、判決が無意味なものになってしまうからである。以前と同様に、出資者の大多数が再び配当金の分配に反対票を投じる可能性があるためである。
この法理は、地方裁判所で支持を得ている。最近の判決のひとつである2024年11月8日付のマドリード地方裁判所の判決は、出資者の多数が賛成した株主総会の決議(配当を行わないという決議)の適法性について取り扱ったものである。財務状況が疑いなく健全な企業を例にとり、その決定がコロナウイルス感染症(COVID-19)の発生直後に下されたものであることを踏まえ、その措置は正当であり、別の事態に備えて準備金を蓄えることの妥当性を主張する企業について述べている。
控訴裁判所は、スペイン会社法第204条に基づき、一部の出資者の利益のために会社の利益を損なう決定に異議を申し立てる出資者の正当な権利を根拠とする。その後、2023年1月11日の前述の最高裁判決を幾度も参照し、得られた利益の剰余金への配分に関する株主総会の決定は、「合理的な必要性」に応えるものでなければならないと指摘している。このように、総会の決定の適法性は、出資者の投票数の純粋な合計のみに基づくのではなく、その合理性にも基づくことになり、その合理性も証明されなければならないこととなる。決定と適法性の関連性は、その合理性にある。そのためには、会社の財務状況だけでなく、決定がなされる時点での状況も分析する必要がある。裁判所は詳細を分析し、その事例における総会の決定は、利益の全額を準備金に割り当てることを正当化する合理性の条件を満たしていないと結論付けた。なぜなら、会社は不確実性に対処できる状況を示していたからである。
要するに、最高裁が確立した法理を基礎付けているのは、「正当化される合理的な必要性がない限り、会社が得た利益から論理的な経済的利益」を得る権利を奪われたことによる損害に直面している少数派を保護しないままにしておくべきではないという点である。
したがって、総会の決定の合理性を判断するには、それがなされた事実や状況を検証する必要がある。ただし、会社の財務状況は最も決定的な要因であるかもしれないが、それを考慮せずに検証しなければならない。
最高裁の判決とは異なり、マドリード地方裁判所は、一貫性を理由に、訴訟がその他の請求を含んでいなかったため、総会の決定は無効であるとだけ判決を下し、それ以上の判示は加えなかった。もし原告が、得られた利益と会社の財務状況に見合った配当の分配を請求していた場合、判決はどうなっていたのだろうか。また、最高裁の見解を考慮するならば、判決を無効とするだけでなく、配当金の分配を命じた可能性も否定できない。
ヴィラ・エドアルド (Eduardo Vilá)
ヴィラ法律事務所
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2025年4月11日