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スペインの労働者の法定労働時間は週40時間とされている(ただし、公務員の法定労働時間は週37.5時間である)。

しかし、この法定労働時間について、大きな改正の動きがある。

2025年2月、スペイン閣僚評議会は、給与を減額することなく、1週間の最長労働時間を40時間から37.5時間に短縮することを提案することを含む法案を承認した。

まだ法律として成立していないが、この記事では改正の主なポイントについて、整理する。

I. 労働時間の短縮

労働時間の短縮に関する法案は、次の内容である。

34

1.労働時間は、労働協約又は雇用契約で合意されたとおりとする。

通常の労働時間の上限は、年平均で37時間30とする。

第三追加条項。

本法に定める労働時間の短縮は、報酬に影響を与えたり、労働者が享受しているより有利な権利やより有利な条件を補ったり、吸収したり、排除したりする効果を持つものであってはならない。

第一の経過措置 最長通常労働時間の適用

本規制発効時点で、年平均で週37.5時間を超える労働時間を規定している労働協約の交渉委員会は、20251231日まで、特に本法第3条に定める最長通常労働時間に関して、本規制の規定遵守を確保するために必要な修正を行う権利を有する。

II. デジタル労働時間記録

改正案にはデジタル労働時間記録システムの導入が含まれており、その主な要件は次のとおりである。

34bis  時間記録。

  1. 会社は、本条項の要件を効果的に遵守するために、労働時間の日々の記録をデジタル方式で保存しなければならない。
  1. 労働時間記録の客観性、信頼性、アクセス性を確保しなければならない

a) 従業員は、各労働日の開始時と終了時に、会社がその内容を把握できないような方法で、個人的に直接記入しなければならない。また、労働日の計算に影響を与えるような労働日の中断も記録しなければならない。

同様に、記入項目は、労働時間が通常か、超過勤務か、補足的かを細分化して特定しなければならない。

b) 登録簿に記録されたデータの信憑性とトレーサビリティを保証するために、登録簿は、それを作成した労働者の明確な識別と、記入された項目の変更を可能にしなければならない。 

c) 情報は、処理可能で、読みやすく、事業者、労働者及び管轄当局が一般的に使用するものと互換性のある形式でなければならない。

ドキュメンテーションを作成し、コピーを取得する。登録システムは、アクセスと管理を可能にする相互運用性をしなければならない。

d) 労働者、その法定代理人、および労働・社会保障検査官は、職場で、いつでも、直ちに登録簿にアクセスできなければならない。さらに、登録簿は、労働・社会保障監察局および労働者の代理人が遠隔からアクセスできなければならない

e) 会社は、本条に規定される登録簿及び要約を4年間保管しなければならず、その間、労働者、その法定代理人、および労働・社会保障監察局の自由に利用できるものとする。

III.  つながらない権利

つながらない権利、すなわち、労働者が就業時間外にデジタルデバイスに接続されない権利は、既に現在の労働者憲章法20条bis、個人データ保護及びデジタル権の保障に関する2018年12月5日付法第3号第88条など、さまざまな規則で規定されている。しかし、この改正案では、重要な改正が導入されている。会社だけでなく、会社と商取引関係にある第三者に対してもつながらない権利を認めていることである。

つまり、企業及びその経営陣は就業時間外に従業員に連絡することを控えなければならないだけでなく、企業と商業関係にある顧客、サプライヤー、その他の協力者も従業員に連絡することはできない。

20bis

1.リモートワーク、特にテレワークで働く労働者を含む労働者は、個人情報の保護とデジタル権の保証に関する規則で定められた条件の下で、会社が提供するデジタル機器の使用におけるプライバシー、デジタル接続の切断、ビデオ監視および地理位置情報機器の使用からのプライバシーの権利を有する。

2. 使用者の切断権保障義務は、業務遂行の要求がない、会社や委任先、会社と商取引関係にある第三者から、いかなる装置、ツール、デジタル媒体によっても労働者と連絡が取れないこと、また労働時間外に連絡が取れない権利に規定されている。

つながらない権利を放棄することはできない。

3. 団体交渉は、特にコンピュータ疲労のリスクを回避するための技術ツールの合理的な使用に関する研修・啓発活動だけでなく、幸福の促進および仕事と私生活・生活を調和させる権利を目的とする、つながらない権利を保障するための行使の様式、手段および適切な措置を定めるものとする。

団体交渉では、労働者にとって重大なリスクとなりうる例外的かつ正当な状況、または緊急かつ即時の措置の採用を必要とする企業にとって潜在的な重大損害がある場合、労働者とのコミュニケーション禁止の例外を定めることもできる。 

4. 勤務時間外のデジタル手段による業務上の連絡や要請に対する拒否または不応答は、従業員に対する否定的な結果、報復、または不利な待遇につながるものであってはならない。

IV. 影響及び向き合い方

2025年2月4日、閣僚評議会は上記の法案を承認した。

今後、スペイン議会を通過しなければ法律として成立しないため、最終的な承認は少なくとも2025年5月か6月まで行われない可能性が高い。

法案が議会で審議されている間、企業は以下の事項の検討を進めるべきでしょう。

(i) 1日の労働時間が新上限値以上となるパートタイム契約は、自動的にフルタイム契約となること

(ii) 1日の労働時間が新上限値未満となるパートタイム労働者の給与は、比例して増加すること。

(iii) 労働時間の記録システムが法案の要件を満たさない場合、新たなシステムを導入しなければならなくなること。

したがって、この法案に盛り込まれた変更は広範囲に及び、企業が属する産業分野や適用される労働協約によって、企業によって影響の度合いが異なる可能性がある。労働協約で既に定められている週の最長労働時間が、新しい法定限度を下回っている企業は、今回の改革による影響はそれほど大きくないであろう。しかし、その他の企業にとっては、この規制変更は深刻な影響をもたらすため、この機会に自社の状況を検討すべきである。

この改正の新しい特徴に適応する方法を、それぞれのケースに応じて計画する必要がある。ただし、この規制の発効が遅れる可能性があること、また最終的な条文に変更が加えられる可能性があることは考慮すべきである。

 

南智士 (Satoshi Minami)

ヴィラ法律事務所

 

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2024年3月7日