2022年12月14日、欧州議会及び連合理事会は、EU域内内市場に歪曲的な効果を及ぼす外国からの補助金に関する規則第2022/2560号(以下、「本規則」とする)を正式に承認した。本規則が制定された主な理由は、EU加盟国内の補助金に対して適用されている現在の厳格な規制と、第三国からの補助金対するこれまでの規制の不在との間の不平等さにあった。欧州当局は、EU市場における競争時に、当該不平等性が悪影響を及ぼす可能性があることを認識していた。

本規則は、2023年7月12日(以下、「本適用日」という。)以降に有効となる。本適用日以降、2018年7月12日以降に付与された 域外からの補助金がEU域内市場(以下「EU市場」という。)に歪曲的な効果を及ぼしているとその時点で判断される場合、欧州委員会に補助金の妥当性審査を可能とする。

一方、本規則は、現在EU市場にて活動する外国企業に大きな影響を与えることへの理解が重要となる。例えば、EU新興企業を買収する外国資本を背景とした投資ファンドは、今後、資金調達に関して詳細な審査を受けることとなる。

しかしながら、本規則は、公共調達手続きに関わる企業にも適用されることに注目したい。本規制は、企業に対する直接の補助金の出所だけでなく、下請け企業、仕入先、第三者への調達手続き前3年間の補助金の出所も審査することを可能とする。

主要な管理メカニズムを検討する前に、まず本規則で提供される補助金の定義に言及することは有益であろう。本規則における補助金は、直接的な資金調達のみでなく、市場金利よりも低い利率、債務の免除、税制優遇措置などを通じた間接的な資金調達も含まれる。

 1) 一般規制

欧州委員会は、20万ユーロ以上の補助金を審査する権利を有することになるが、本規則は補助金400万ユーロ未満の補助金はEU市場の歪曲効果を引き起こす可能性が低いとみなしている。このため、企業は400万ユーロ未満の補助金を届出る必要はないと理解して良かろう。

いかなる場合でも、欧州委員会が第三国からの補助金の調査を実行する場合、初期的調査と詳細調査の2段階で構成し、所定の期間内に実施する。

2)企業結合規制

当該規制は、主に企業結合取引に対する外国補助金の特定を対象としている。事前届出義務制度による管理メカニズムは、欧州委員会の承認が出るまでの間、結合オペレーション実施の停止を意味する。

本規則は、合併/被買収企業が届出義務を有するかに関し、補助金額及び、売上高に閾値を設けている。具体的には、(i) 被買収企業、合併当事会社またはJV会社のうち1社がEU加盟国域内に設立され、EU域内で5億ユーロ以上の売上高を持つ 場合(ii)買収/被買収企業、合併当事会社、JV事業者またはその親会社が過去3年間に5000万ユーロ以上の外国補助金を受領した場合には、届出が必要となる。

いずれにおいても、欧州委員会は上記数値に該当しない場合であっても、取引直前の過去3年間に外国補助金を受け取った可能性がある企業結合を審査する権利を留保する。

審査対象となった場合、初期的審査は25営業日以内、詳細審査は90日営業日以内にそれぞれ実施される。

3) 公共調達に対する補助金規制

当該規制は、公共調達に入札参加する企業が第三国からの補助金を受けている場合に、対象企業が有利な条件で契約に至った場合、当該補助金を規制することを目的としている。

閾値基準は、以下の二つがある。

  • 公共調達契約額が2億5000万ユーロ以上、もしくは発注ロットが1億5000万ユーロ以上である場合
  • 公共調達に参加する企業(商業的自立性なき子会社及びホールディング会社を含む)、もしくは主要供給業者、下請業者(入札額20%以上での貢献)で、過去3年間で400万ユーロ以上の外国からの資金面での貢献を受けている場合

いずれにせよ、本規則は、届出義務を有しない補助金の特定、分析を欧州委員会に容易にするため、事前届出義務対象とならない企業に対し、いかなる場合でも、調達参加申請時に、外国補助金の拠出一覧を申告するよう要請している。

EU市場歪曲性の分析

-EU市場の歪曲が、補助金受領企業に有利な形であったかどうかの分析は、補助金額、種類、目的、企業の状況や規模、企業の市場の特性などの要素が考慮される。同様に、当該補助金がEU市場に与える影響も考慮される。

-欧州委員会は、EU競争政策の保護分野で活用する情報提供の要請・調査の実施、調指示違反、もしくは調査に非協力的な場合の罰金制度等、の規制メカニズムを規定しており、これらはすべて、受領した補助金情報の収集を目的としている。

最終的には、以下の様な結論に至る:

  • EU市場で取引をする企業に対する第三国からの資金提供に対するEUの監視の強化。
  • 企業は2023年7月12日までに、本規則に対応しなければならない。欧州委員会は、2023年7月12日以降、企業が2018年7月12日以降に受領した補助金を審査できるようになる。企業結合もしくは公共調達の場合、受領補助金の届出義務は、2023年10月12日まで発生しない。

 

 

マルティネス・コスタ・ディエゴ (Diego Martínez-Costa)

ヴィラ法律事務所

 

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2023年3月24日