2022年10月20日付欧州連合司法裁判所判決(事件番号第585/2020号)は、請求書の支払い遅延に直面する債権者の権利及び当該遅延にかかる利息の計算に関する疑問点を明確にした。
本事件は、カスティーリャ・イ・レオン自治州政府に医療サービス提供した複数の企業から未回収債権の回収権を取得した、あるスペインの企業に関するものである。複数の請求書は支払い期限に到達していたが、未払いのままであった。
債権回収権を取得した会社は、債務者である州政府に対して遅延利息及び回収手数料の名目で未払い請求書1通につき40ユーロを請求した。支払いが実行されなかったため、債権者はヴァリャドリッド行政裁判所に対して行政訴訟の訴状提出をした。しかし、当該司法手続きは中断され、裁判所は欧州司法裁判所に対して、以下のようないくつかの予備的質問を付託した。
- 質問1: 40ユーロは、債権者が請求時に請求書を個別化している場合に限り請求書毎に払われるものなのか、それとも、いかなる場合においても請求書毎に払われるべきものなのか。
この点についての回答は、債権者が1つの請求で未払い総額を請求したからといって、未払い請求書毎の固定金額を受領する債権者の権利を制限するためにEU指令第2011/7号第6条を適用することはできないとした。欧州司法裁判所は、当該EU指令は債務不履行抑止を目的としている旨、及び、複数の未払い請求書を合計することに伴い40ユーロの回収制限を行うことは、第6条に定める固定金額についての権利に関して債務者に有利な例外を与えることになる旨を指摘した。
- 質問2:支払い期限の計算
欧州司法裁判所判決の該当部分は、2017年11月8日付第9/2017号「公的機関の契約に関するスペイン法」第198条(第210条と併せて)の解釈に影響を与える。第210条において、行政機関による適合性立証の期間を1ヶ月と定めていることをまず考慮する。そして第198条は、作業証明書、納入物品や提供サービスとの適合性の承認日を起点とし支払期間を30日間と設定する。つまりこれら2つの条文の共同適用により、一般的には、60自然日が支払い期間と考えられる。
欧州司法裁判所は、企業と行政機関との間の支払期限を最長60自然日(作業証明書承認、納品又は提供サービスの検証期間としての30日と合意金額の支払い期間としての30日の合計)と定めるスペイン法の規定がEU指令第9/2017号に準拠するかを分析した。
EU指令第2011/7号第4.3条a)が、債務者が行政機関である場合の支払い期間は、30日とすることを国が保証しなければならないと定めていることを想起されたい。当該期間は基本原則であり、提供された製品又はサービスの受諾又は検証期間について契約に定めがある場合には、30日という当該支払い期間は前述の受諾が生じた日から起算されるという唯一の例外を認める。しかし、検証期間を追加するには、契約の特性に基づき正当化されなければならず、いかなる場合においても30自然日を超えてはならないとされている。
したがって、行政機関と企業間取引において最長60自然日の支払期限を定める加盟国の国内法令は、上述の条件を満たす場合にのみ許される。
- 質問3:未払い請求書の付加価値税の額は、遅延利息計算時に債務金額に含まれるか
EU指令第2011/7号第2.8条には、「税金を含む」という表現が含まれている。したがって、未払い請求書の付加価値税を必ず債務額に含めなければならないことを意味する。これには、付加価値税の納税義務者(この場合請求書の発行者)の税務署への納付時期や方法は影響しない。したがって、「債務額」の概念は、納税義務者が付加価値税納付義務を履行した日付や法が定めた支払い方法に応じて異なるものではない。
ヴィラ・エドアルド (Eduardo Vilá)
ヴィラ法律事務所
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2022年11月11日