「アコーディオン・オペレーション」としても知られる減資・増資の同時実施に関して、資本会社法第343条は以下のように定めている。
- 会社資本金をゼロ又は法定最低資本金額を下回る額とする減資にかかる決議は、会社の組織変更又は会社資本金を最低資本額以上とする増資を行う旨の決議が同時にされる場合にのみ可能とする。
- いかなる場合においても、株主の株式優先的引受権を尊重しなければならない。
これらのオペレーションは通常、損失の累積により悪化した資産状況を改善する目的で行われ、間髪を入れずに行われる2つの連続したオペレーションにより構成される。第1のオペレーションは、会社の資本金をゼロ又は資本会社法第5.1条の定める最低資本金額を下回る額にまで減資すること、第2のオペレーションは、会社の資本金を資本会社法第4条の定める最低資本金額以上に増資することである。この第2のオペレーションは金銭による出資又はその他の金銭によらない出資のいずれによっても実施可能である。
資本会社法第304条は、新株の発行を伴う増資を金銭出資により行う場合には、各株主は自身が保有する株式と同等数の株式について優先的に引受ける権利を有すると定めている。
さらに、2022年2月7日の公文書管理局の決定において、株主の優先的引受権は資本会社法第304条に定める場合に限定され、債権との相殺による増資の場合には適用されず、後者の場合は法律の他の条項において特定の規制が設けられている、とした。
しかしながら、資本会社法第343.2条は「いかなる場合においても、株主の優先的引受権は尊重されなければならない」と定めている。
この明白な矛盾を前に、増資が金銭によらないアコーディオン・オペレーションの場合、例えば、債権による相殺によって増資が行われる場合に、株主が優先的引き受け権を保持し続けるのかについて疑問を抱くのは合理的である。
公文書管理局は、2022年5月5日の決定によりこの疑問を解決した。この決定では、会社の株主総会が過半数によって決議したアコーディオン・オペレーションについて検証がされた。当該決議においては、株主の5分の1が反対し、その他の株主は決議を棄権した。オペレーションの内容は、資本金をゼロに減資し、同時に、第三者が保有する債権を相殺することで増資を行うというものだった。注目すべきは、株主総会には株主全員が出席したこと、株主総会議事録には新株についての株主の優先的引受権を放棄する旨の記載がされていないこと、及び、経営組織の報告書には、増資については株主の優先的引受権は適用されないとの警告がされていたことである。
アコーディオン・オペレーションは、減資後の増資がない場合には減資が有効とならないという複雑な行為であり、それゆえに区別化された独自の性質を有していることから、公文書管理局は、増資と減資とを分けて分析することを放棄した。公文書管理局は、アコーディオン・オペレーションにおける株主の優先的引受権は強化された使命を有しているとの見解を有している。すなわち、通常の希薄化防止メカニズム(一般的な増資の場合の目的)のみではなく、少数株主が過半数の合意において事実上会社から排除されたり、(資本金をゼロとする)減資の効果によって資本参加の割合が象徴的なレベルにまで減少させられたりするのを防止するという使命も果たすとの見解である。この見解によれば、資本会社法第343.2条の「いかなる場合においても」という表現は、文字通り、株主が当該権利を行使できるようなあらゆるオペレーションを意味することになる。また、アコーディオン・オペレーションは非金銭出資や金銭出資と現物出資の混合以外の方法によって実施されることが可能であり、この場合、株主の優先的引受権の適用はされない。
また、株主全員が出席していることで決議が承認されたという事実、及び、経営組織の報告書に当該オペレーションには株主の優先的引受権の適用はされないことが警告されていた場合に、株主の黙示的な権利放棄を構成するかどうかについては、公文書管理局は、以下の理由により、当てはまらないと解釈をした。
(i) 当該報告書は株主の優先的引受権放棄に関してなんら関連性を有しておらず、当該問題は当該報告書の義務的内容ではないこと。
(ii) 株主はそれについて意見を述べる義務がないこと。
(iii) 権利の放棄は明確な性質を有していなければならず、特に株主の一部が反対票を投じたような本件の場合においては、単なる報告書を発行したり、株主がそれについて認識を有しているという事実によって達成できるものではない。
本決定において、公文書管理局は、当該オペレーションを行う目的や少数株主に対する詐欺的又は損害を与える意図があったかどうかの事実を検証することなく、アコーディオン・オペレーションにおいては、たとえ株式の払い込みが金銭によらない場合であったとしても、株主の優先的引き受け権は尊重されなければならないと結論づけた。
ヴィラ・エドアルド (Eduardo Vilá)
ヴィラ法律事務所
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2022年6月3日