2021年12月3日付スペイン官報にて、2021年11月16日付法的安全・公文書管理局(以下「公文書管理局」という。)決定が公示された。当該決定は、ある有限会社(S.L.)の会社の取締役報酬にかかる公正証書の登記申請を、ラ・コルーニャ第1商業登記所登記官が却下したことに関するものである。
本件において、会社の臨時株主総会は、会社の経営組織及び取締役報酬にかかる定款規定の修正を決議した。当該修正規定の条文は以下の内容だった。
「会社の経営及び裁判上・裁判外における会社の代表権は一人取締役、複数取締役(独自代表又は共同代表)又は取締役会に属し、その選択は株主総会が行う。複数取締役が存在する場合には、会社の代表権はそのうちの2名により共同で行使されるものとする。
資本会社法に従い、取締役の機能のうち他者に委譲できないものを担う取締役は、無償とする。なお、上記の無償は、取締役として委譲ができない機能以外の機能を担う者に対して支払われる役員報酬を妨げるものではない。この場合、取締役全員に支払われる役員報酬総額の年間上限額は株主総会で承認されなければならず、金額の修正が承認されるまで当該上限額が維持されるものとする。
株主総会において他に決議がされない限り、役員報酬の取締役間における分配方法は、取締役相互の合意により定めら、取締役会がある場合には、取締役会決議により、各取締役の機能及び責任を鑑みたうえで定められるものとする。
会社は取締役の民事責任保険を契約することができる。」
商業登記官は、以下の2つの理由に基づき、本件公正証書の登記を拒否した。
1) 各自代表又は共同代表の場合における取締役の人数、少なくとも最低人数及び上限人数を示すべきである。
2) 上記にかかわらず、本条文の文言は、役員報酬の性質や取締役の性質、また、該当する場合における報酬の形態について体を成していない(資本会社法第217条及び商業登記規則第185条)。
この商業登記官の判断について異議申し立てが提起された。本稿では、上記のうち2点目の論点について分析する。
公文書管理局は、上記2点目の論点は役員報酬制度に関連する問題と定め、役員報酬の具体的制度は、法の定める範囲に従い、定款で明確に定められなければならないと述べた。
2018年2月26日付最高裁判例を参考にしながら、公文書管理局は役員報酬について繰り返し述べられている当局の見解を説明した。それに基づき、公文書管理局は「執行取締役の異なる報酬項目は定款に記載される必要があるものの、定款で定められた報酬項目の全部又は一部のみが当該取締役に支払われるのかを詳細にするために執行取締役と会社との間で結ばれる契約を参照することができることを認めており、」「これにより、定款において可能な報酬項目が規定され、役員報酬総額の年間上限額が株主総会で承認されることで、適切な株主保護と両立する」と説明を加えた。
本件においては、公文書管理局は「議論の対象となっている定款規定によって生じている状況は、いくぶん逆説的なものである」と述べ、そのため「本条項は可能な報酬項目に関する基本的な最低要件を満たしていないため、登記拒否の判断は疑うことなく確認されるべきであるかもしれない。」と認めたものの、公文書管理局は「実際の問題は別の点にある」とし、議論対象の条文は執行役員の報酬にかかる定款の枠組みではなく、経営組織の如何、つまり、取締役会の有無にかかわらず、あらゆる取締役について完全に無償とする枠組みを定めることを意図するものであると続けた。
公文書管理局は、本件条文の文言は「より明確にできるものである」と認めたが、当該条文について「あらゆる取締役については無償であるが、取締役として委譲できない機能以外の機能を担う者への報酬を妨げるものではない」と解釈した。こうすることで、取締役の役職独自の機能以外の業務や雇用関係を意味していると理解せざるを得なくなり、また、結局のところ、取締役職務外の報酬は、その上限の決定は株主総会のコントロール下にあり、報酬分配は取締役自身の裁量に応じてなされることから、取締役により隠蔽された報酬を示唆すると理解するべきではなく、これらのその他の業務を担う意思のある取締役が従わなければならない特殊性と考えるべきであると結論づけた。
最終的に、公文書管理局は、本件異議申し立てを認め、登記官の判断を取り消した。
ヴィラ法律事務所
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2021年12月24日