自己株式」というコンセプトは、株式会社及び合同会社が自社の株式や出資持分を自身で保有すること、と定義できる。

スペイン資本会社法は、自己株式の取得に関しては株式会社か合同会社かによって異なる条件や制限を設定しており、以下の3種に分類される。

I. 初期取得

原則として、資本会社法第134条は、資本会社が会社を設立する際や株式資本を増加させる際に、自己の(もしくは親会社の)持分/株式を取得することを禁止している。

合同会社では、当初の取得は無効とみなされる(資本会社法第135条規定)。

一方、株式会社に対しては、このような当初の取得は無効ではなく、設立発起人となった株主(自己株式の取得が会社設立段階で発生した場合)または取締役(増資の場合)が、連帯して出資金払込みの義務を負う。

II. デリバティブ取得

合同会社による自己株式(又は親会社の株式)のデリバティブ取得は、以下の場合に限り許されており、それ以外の状況における取得は法的に無効とされる。

a) 当該株式が取得した資産の一部を構成する場合、無償で取得された場合、あるいは当該株式の所有者に対する会社の債権弁済のための裁判判決による取得の場合。

b) 株主総会決議に基づく減資の実行を伴う自己株式の取得の場合

c) 競売、又は債権者への裁定の結果として自己株式が取得される場合

d) 自己株式の取得が株主総会によって承認され、利益又は余剰準備金がその取得資金として用いられ、取得する自己株式が、退社権を行使した株主又は退社させられた株主が有していた株式、譲渡制限条項の適用により取得される株式、又は相続により取得される株式である場合。

しかしながら、上記のケースにおいて合同会社が取得した自己株式は、法及び定款の定めに従い、取得から3年以内に償却又は処分がされなければならない(資本会社法第141条)。

株式会社もまた、下記の条件を満たした場合には自己株式(又は親会社の株式又は出資持分)を取得することができる(資本会社法第146条及び第148条)。

a) 自己株式の取得について株主総会によって承認がされていること。ただし、当該承認決議から5年を経過してはならない。

b) 持株会社が保有していた株式の取得の場合には、純資産が株式資本に法定準備金又は定款の定める準備金の額を加算した額を下回るという効果を生み出さないこと。

c) 自己株式の額面価額は資本金の額の20%を超えることはない。

d) 取得された自己株式は、無償で取得される場合を除き、すべて払込みがされた状態でなければならない。そうでない場合には、当該取得は無効となる。

III. 自己株式の自由取得

加えて、以下の場合には、株式会社は自己株式又は親会社の株式又は出資持分を自由に取得することができる(資本会社法第144条):

a) 株主総会によって承認がされた減資の実行に伴う自己株式の取得の場合

b) 当該持分・株式が全財産として取得された資産の一部を構成する場合で、取得から3年以内に譲渡がされることを条件とする場合

c) 全額払込がされた自己株式を無償取得した場合で、取得から3年以内に譲渡がされることを条件とする場合

d) 当該自己株式の保有者に対する会社の債権の弁済のための法的裁定の結果として全額払込がされた自己株式を取得する場合。

違反した場合の結果

上記の条件に反して株式会社によって取得された会社の株式について、1年以内に当該自己株式を譲渡する義務が会社に課される。

譲渡がされない場合、会社は当該自己株式について償却しなければならず、これには資本の減少が伴う。会社が自らの意思で会社の株式資本を減少しない場合、利害関係者は会社の本店所在地を管轄する裁判所の書記官または商業登記官に対して、それを申請することができる。また、株主総会の決議が減資に反対する場合、または株主総会で承認に至ることができない場合、取締役は裁判所職権又は登記官職権での減資を申請する義務を負うこととなる。

同様に、上記の要件を履行しない場合の罰則として、資本会社法第157条は、違反した会社の取締役が当該違反の責任を負い、引き受けがされた株式の額面価額と同額を上限とする罰金につながる可能性がある旨を定めており、場合によっては、取締役は当該会社の取締役会の構成員のみならず違反会社の代表権をもつ経営者又は人物も含むとの考えから、親会社の取締役にも責任が及ぶ。

 

 

ビジャビセンシオ・カルラ (Carla Villavicencio)

ヴィラ法律事務所

 

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2021年7月2日