2022年6月3日付バルセロナ県地方裁判所判決(案件番号ECLI: ES: APB: 2022: 5915)は、区分所有制度の下で構成される建物の最上階部1号室の所有者が、建物の屋根と当該屋根裏部屋の屋根スラブの間の空間を屋根裏部屋または屋根裏の物置として排他的に使用しようとした事例を分析したものである。

第一審判決では、区分所有者管理組合の訴えを一部支持し、被告所有者に対し、管理組合総会の決議を尊重し、屋根の改修工事の工事請負業者が共用部分アクセスを可能とするように命じた。

法的根拠において、バルセロナ県地方裁判所は以下の問題を分析した。

A. 該当スペースの法的資格

B. 共用部分の専有的使用を行う区分所有者への管理組合の受動性(黙認について)

C. 決議事項の採択と過半数要件

D. 権利の乱用

A. 第1の問題に関しては、まず、屋根は共用部分を構成する、と決定したカタルーニャ州民法第553.41条を分析した。次に、性質的に共用部分とされるスペース(私的要素の使用と享受を確保するために不可欠であり、破棄できない部分)と目的のために共用部分とされるスペース(構成権または所有者管理組合の合意により破棄できる部分)を区別する判例を検討した。

建物の全てを覆う屋根は、区分所有制度の下で、性質的に共用部分を構成する。今回問題となっているスペースも、元来建築要素を構成するもので、区分所有者による専使用を目的には予定されていなかったため、性質的に共用部分を構成すると解釈された。

B. 第2の問題に関しては、カタルーニャ州民法第553-43.1条は、共用部分と一つまたは複数の私的要素を結びつけたスペースの専有使用を、その事実の把握がありながら長期にわたる受動的態度を理由にした所有者管理組合の黙認に基づいては認めないことを立証した。ここでは、2019年7月11日付および2021年3月24日付カタルーニャ州高等裁判所の判決に言及し、共有部分の原状回復を目的とするためには黙認の運用を認めるが、共有部分の専有使用が他の区分所有者の使用権を不当に剥奪する場合にはこれを認めないとした。

C. 第3の問題については、所有者管理組合総会決議の採択には、満場一致も5分の4の賛成も必要なく、カタルーニャ州民法第553-25.2条b規定に従い、「例えその決議が区分所有者組合の法人格または定款の変更や、構造または外部構成に影響を与える場合でも、居住性、アクセス性、安全性、エネルギーまたは水の効率性のために必要な技術革新であれば」単純多数決でよいとした。

D. 第4の問題については、スペイン民法典第7条2項、及びカタルーニャ州民法第111条7、8項を法的根拠に権利の濫用の法理を説いた。そこでは、

「上辺の合法性の保護及び見かけ上の権利行使の下に行動し、公平と善意によって課せられた限界を超えて、第三者や社会に損害を与えた者は責任を負う」とした最高裁判所判決に言及し、以下に挙げるような権利濫用の本質的な要素を強調した。

1)客観的または外形的に適法な権利の行使

2)損害

3)主観的(加害の意図)または客観的(過度または異常な権利行使に起因する損害)に示される、当該損害の不道徳性

同様に、(i) 判例は主観的な側面に焦点を当てており、これが正当な動機に従ったかどうかを知るためには、権利行使者の行動、精神に注視する必要があること、(ii) 制裁が法的教訓によって課されている場合にはこれを主張できないこと、そして(iii) 最後にいかなる場合でも制限的適用でなければならないという点を強調した。

上記を鑑みた上で、所有者管理組合の利益と区分所有者の利益を対比し、前者が合法的で共通の利益(建物とその部屋、特に屋根裏部屋の健康状態、居住性、機能性の向上)をもたらすのに対し、後者は所有者管理組合の要素を自然に不当に専有使用することに基づいており、保護の対象にはなり得ないと結論づけた。

 

 

ボスク・ミレイア (Mireia Bosch)

ヴィラ法律事務所

 

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2022年8月5日