5月29日付最高裁判決第214/2020号は、二人の取締役が上訴した、スペイン倒産法第172条bis(2011年法第38号により規定された条文)違反が争点となった。取締役らはここでいう「赤字」とは、破産宣告の日において、破産管財人報告書に添付された資産目録と債権者リストから赤字が存在するかどうかが決定されると理解していた。しかし、地方高等裁判所は、当該コンセプトではなく、破産者の資産を現金化した際に全ての債権を弁済することができなかった場合に、つまり清算後に赤字が発生するものと理解していた。

最高裁第1法廷は、破産手続きが開始されたのは2014年3月7日付勅令法第4/2014号の施行後にあたるため、適用される倒産法第172条bisの条文文言は清算開始時点において有効であったことを明確にした。

第172条bis条文の解釈を行うため、最高裁は破産責任の範囲にかかる規定の改正経緯を要約した。

  1. 2004年7月9日付法第22/2003号倒産法によるもの
  2. 2011年10月10日付法第38/2011号によるもの
  3. 2014年3月7日付勅令法第4/2014号によるもの

上記第3においては、破産の有責性を決定づける行為が、債務超過状態を発生又は悪化させた範囲で、赤字の全部または一部の損失補填を求められる、という新しい改正点が強調された。

上記規定において「赤字」の法的概念を確立しなかったため、最高裁は本観点を明確にするために以下の検証を行なった。

(i) 責任の原因は債務超過状態を発生又は悪化させたことにある。

(ii) 着目すべきは資産が不十分である状態(資産が負債を下回る)ではなく、債務者が定期的にその義務を果たすことができなくなった状態である。

2015年1月12日付判決第772/2014号から2019年5月22日判決第279/2019号まで、最高裁は法令に従い、当該責任の性質は補償的なものであり、したがって、取締役、清算人、又は法人の一般代理人(及び特定の状況においては株主も含む)に対して、有責破産を特定する行為が支払不能状態を発生、又は悪化させた範囲で、赤字破産の全部又は一部の損失補填責任を追求することができる、と判断してきた。つまり、この責任の原因は、支払不能状態の発生又は悪化への寄与度にあると言える。

最高裁は、赤字は支払不能状態の結果であるとこれまで理解してきた。故に、破産の有責性を問うべき、損失補填を請求すべき、と立法者に分類された全ての行為は

(例えば、破産者による破産計画に対する違反、計画への協力の欠如、又は資産隠し等)は、必ずしも破産宣告に先立って行われる訳ではないと説明できる。

本件において最高裁は、破産宣告の時点においては(破産管財人の報告書によれば)会計上の資産は負債を上回っていたが、当該資産の中には親会社に対する債権も含まれており、計13,483,578.08ユーロの不当な金銭の処分によって支払不能状態及び破産手続きを引き起こし、この金額の返済がないことが、すべての資産を現金化しても既存の負債の全てを弁済することができないという状態の原因となったと判断した。したがって、最高裁は、支払不能状態を生じさせた故意又は過失(重過失)行為にかかる取締役の責任の範囲は、資産の現金化によって弁済がされることができなかった赤字(破産債権と理解される)に相当するとした。

現在は「赤字」の概念を確立する法規制が存在することも、ここで特筆する。改正倒産法を承認した2020年5月5日付勅令法第1/2020号第456条第2項(赤字補填)は、赤字は破産管財人の資産目録に記載された破産財団の資産及び権利の価値が債権者リストにて認識された破産債権の総額を下回る場合に存在すると定めている。したがって、赤字の概念にかかる現行法規制は、本件によって上訴が却下され、破産会社の赤字を補填することとなった二人の会社取締役によって主張された概念と非常に類似したものである。

 

ボスク・ミレイア (Mireia Bosch)

ヴィラ法律事務所

 

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2021年6月18日