2019年6月10日付スペイン官報第138号に掲載された2019年5月20日付登記・公証総局(現・法的安全・公文書管理局)の決定は、営利企業が国税庁(以下、「AEAT」という)を抵当権設定者として、租税債務の納付を保証するために抵当権を設定したケースを分析した。

当該決定は、以下の事実と法的根拠に基づいて行われた。

 

I. 前提事実

  1. 本件の抵当権者である合同会社(L.)は、2018年11月29日付作成公正証書により、租税債務の支払補償のためにAEATへの担保提供をし、ある所有不動産に2件に抵当権を設定した。
  1. 2018年11月30日付にて、抵当権者は、不動産登記所に公正証書の正本を電磁的方法で提出、2018年12月11日に紙面による第一真正コピーを提出し、更に2019年1月2日、抵当不動産の価値評価書を組み込むため電磁的に同評価書を提出した。
  1. 2019年1月21日付にて、不動産登記官は以下の判断を示した。

-登記不動産上に、国を抵当権設定社とした同順位の2つの抵当権設定申請がされた。

– 抵当権者から提出された不動産鑑定書が(公正証書作成時点において)期限切れであったため、抵当不動産の鑑定価格および競売レートについての登記が中断された。

  1. 抵当権者は、上記決定を不服として以下に挙げる理由に基づき異議申立てを行なった。

– 債権者は、以下のa) b)に同意していた。

(a) 鑑定書の有効期限後に抵当権設定期間を認めていたにもかかわらず、その期限が切れる前の日付にて抵当権を受け入れていた

(b) 不動産の鑑定価格と競売の場合のレート

– 上記状況下では、1981年3月25日付住宅ローン市場を規制する法律第2/1981号改訂第3条2項に規定される、債権者による承諾の義務は適用されないとした。

– 公正証書の作成日には、(不動産鑑定書に関する)スペイン令ECO/805/2003号で定められた6ヶ月の期間が経過していなかったこと。

II. 法的根拠

  1. 不動産登記官が提出を依頼した形で公正証書の正本、又は謄本証明の提出はされていないが、当時、公正証書の正本が電磁的方法で提出されていたため、登記官が公正証書を閲覧することは可能であったことを理由に、異議申立てが認められ審査が開始された。
  1. 不動産鑑定書が失効している場合の競売レート登記について、登記・公証総局は以下のように判断した。

-前提として、失効している鑑定書に基づく鑑定価格は登録簿に記載できない。期間終了日(dies ad quem)は、提出された公的文書の日付とみなされなければならない。

– しかし、今回、公的機関が抵当権設定者である以上、同機関が発行した公的証明書により、今回の検証の対象である鑑定書を添付した申請書が同書の有効期限内に承認されたことが認定されれば、有効期限は切れていないと解することができるだろう。

租税債務の保全のためAEATを抵当権設定者とする抵当権は、スペイン民事訴訟法第68221号で定められているような、認定団体が実施する競売のための鑑定を要しない。故に、有効な不動産鑑定書なき抵当権設定の登記は正当である。

– 抵当権設定公正証書に失効した鑑定書が含まれていた場合、債権者からの明示的な要請がなくとも、鑑定書を否認した状態で公正証書を発行することが可能であった。債権者の明示的要請は、通常抵当権設定の場合には必要である。

抵当権設定登記における鑑定価格の存在は、スペイン民事訴訟法第670条及び第671条に示される登記効力に欠く。なぜなら行政による強制執行手続では構成要件として鑑定の種類を要求しておらず、その存在は法的効果としての決定性を有さない。

その結果、登記・公証総局は異議申立てを退け、登記官が発行した登記証明書を承認した。

 

ボスク・ミレイア (Mireia Bosch)

ヴィラ法律事務所

 

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2022年3月18日