2018年2月26日付スペイン最高裁判所判決は、スペイン資本会社法に定める会社役員報酬制度について、役員報酬が法に則っているとみなされるための要件、すなわち同法第217条及び第249条に定める「累積」システムに関し、以下の説明を行った。

a) 定款に役員の職位が無償であるか、有償であるかが明示的に規定されていること。有償であるとの規定がある場合、報酬のコンセプトも同様に記載義務がある(資本会社法第217条)。

b) 役員報酬の年間上限を決定する株主総会決議があること(資本会社法第217条3項)。

c) 定款で定められ、株主総会にて承認を経た報酬総額を役員間で分配するための合意があること(複数構成員の合議制である場合)。また、取締役会設置会社の場合は、業務執行役員または代表取締役らとの間の業務提供契約に関する株主総会開催・承認も要する。

法的側面においては、当該判決は、定款に役員報酬に関する規定がなくとも、更には株主総会の承認がない場合でも、取締役会がこれを設定することができるとしていたスペイン登記・公証局の見解を拒否するものであった。また、役員報酬システムの定款明記が要件であることを明らかにした。

上記を考慮した上で、会社役員報酬を損金算入する必要条件に関しては、税務所の基準を確認する必要があった。

2019年2月29日付スペイン全国高等裁判所所判決は、上記に関する複数の問題点を浮き彫りにした。

1) 法律要件を満たした役員報酬は、損金算入が可能となる。適法性がない場合は、損金算入対象とはならない。

2) スペインにおける役員報酬の適法性は資本会社法に定める要件規定に照らし分析する必要がある。つまり、厳格に商業上の適法性要件を満たす場合にのみ損金算入可能となる。

3) 同様に、資本会社法第217条に則り定款に報酬規定がない場合、損金算入可能とはならない。

4) スペイン国税庁(AEAT)の損金算入に関する検証において、 (i)役員報酬に関する明示的な定款規定の有無、及び(ii)報酬がお手盛りに該当しないこと、の二つの要件を満たしている場合、取締役報酬は損金算入可能としている。

報酬が損金算入対象となるためにお手盛りを構成しないことに関し、スペイン国税庁は、定款が規定する報酬上限を超過する取締役報酬を、取締役会の金額増加決定にかかわらず、損金算入対象とみなさないことに言及する必要があろう。この場合、定款規定の上限を超過額に該当する金額についてはお手盛りであるとみなされ、損金算入されないこととなる。しかしながら、報酬上限が株主総会で承認されている場合、つまり形式上法律要件を満たしているが報酬の「合理性」が疑問視される場合の状況はここまで明確なものではない。報酬が会社の価値、その時々の経済状況、及び同業他社の市場比較水準に比例しない場合は、これらの基準に従うべきものを超過している点で資本会社法第217条4項違反とし、従って、国税庁が「合理的」報酬を超過する金額をお手盛り額とみなすことは妥当であると言えよう。「合理性」関しては、対象となる会社の事情及び時機につき、事案毎に判断するべきであろう。

 

上級管理職及び取締役の地位の二元性にかかる前提

会社役員が、経営業務に関与すると同時に被雇用者である場合、会社との間に同時に発生する商業上の関係及び労使関係の二元性を考慮する必要性はない。資本会社法上の「関係性理論」によると、上級管理職の雇用契約を有するマネージャー職の者が同時に当該会社の役員でもある場合、商業上の関係は労使関係を吸収する。結果として、役員の受領する報酬は、会社の業務執行機関における職務への対価であると理解すべきであり、報酬を支払う会社側に支払い義務がない場合は(つまり定款に役員報酬規定がない場合)、当該報酬はお手盛りであると理解され、その金額は損金算入対象とはならない。当該前提においては会社の管理・執行業務(有償な業務)を真に提供したにもかかわらず、支払われる報酬は国税庁の要求する法律上の形式的要件を満たさないが故に損金算入対象とならない、というパラドックスが生じることとなる。

 

業務執行役員及び代表取締役の報酬 

スペイン資本会社法は第249条3項において、取締役会、業務執行役員若しくは代表取締役との間の業務提供契約の締結義務に関し、具体的なメカニズムを規定している。しかしながら、上記の正式な要件を満たした場合でも、スペイン国税庁が要求する商業上の法制度の厳格な遵守を達成し、報酬が損金算入な経費として認められるためには、上記契約書に加え、株主総会は契約書で規定された金額と同等かそれ以下の役員の年間報酬最高額を承認する必要があり、それ以降の年間報酬が、承認された金額を超えない限り当該承認は有効である(資本会社法第217条3項)。いずれにせよ、当該契約書で定められた報酬は、株主総会で承認される「報酬方針」に適合する必要あるが、非上場会社では本書作成は必須ではない。契約で定められた報酬が報酬方針により定められた金額を超える超過分はお手盛りとしてみなされ、よって損金算入不可能な費用となる。

 

一人取締役

一人取締役会社の場合は、資本会社法にて明示的に規定がなく、取締役会設置会社を対象とした資本会社法第249条3項規定を適用できないため、業務提供契約の締結を要求できないと一般に理解される。契約書の不在により適法性と損金算入の要件遵守のためには、定款には一人取締役の地位が有償であることを含める必要があり、株主総会は一人取締役の執行業務提供に対する年間最大報酬額を承認する必要がある(資本会社法第217条3項)。

最終的に、スペイン国税庁の審査部は厳格な基準のもと役員報酬に関する損金算入に関し分析し、2014年1月2日付及び2015年5月5日付スペイン最高裁判所判決に基づき、会社が「商業上の法制度の厳正な遵守」を実行した場合にのみ損金算入可能であるとしている。ここでいう法律要件とは、法令及び会社定款に基づくものであり、定款は会社経営の上でのする一連のルールとして設定されており、定款規定なしに役員報酬を支給し、定款を遵守しないことは「背任行為」と解釈される。

従って、前述の全国高等裁判所判決は、役員報酬の損金算入拒否は、本件問題に関する商業上の規則の不履行の結果であるとした国税庁の主張を支持した。従って、各会社で報酬を受領する役員の状況を分析することが重要となる。特に、ある役員が、会社経営に関与しながら、会社役員に選任される日付以前に締結した上級管理職の雇用契約に基づきマネージャー業務を兼任する場合は、注意を要する。

 

 

ヴィラ・エドアルド (Eduardo Vilá)

ヴィラ法律事務所

 

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2020年4月24日