スペイン知的財産法(Ley de propiedad Intelectual、以下“LPI”)によると、知的財産の保護期間は作者の生存期間及び死後70年までと規定されており(第26条)、当該規定は一般的な文学、芸術及び科学作品に適用される。

しかしながら、直近の最高裁判所の判決では、1987年以前に亡くなった作者の作品について、LPIの暫定措置法第4条に基づき、上記規定の適用を否定している。この場合の知的財産保護期間は、1879年に定められた旧LPIに基づき、生存期間及び死後80年とされる。

2015年4月13日の最高裁判所の判決にて、イギリス人作家G.K.Chestertonの相続人及びスペインの編集社であるEnokia,S.L.との議論に決着がついた。

当該作家の相続人たちは、Chestertonの死亡時(1936年)に適用されていた1879年施行の旧スペイン知的財産法に基づき、未だ当該作家の作品は公有財産となっていないため、スペイン編集社における当該作家の作品の商品化を中止するようロイヤル・リテラリー・ファンドを通じて、抗議した。

一方Enokiaは、文学、芸術作品の保護を目的とするベルヌ条約第8条7項よると、知的財産の保護期間は作品が作られた国の規定を超える事はできないとされ、イギリスでは既に公有財産と見なされている事から、当該条約に違反するとし申し立てを行った。

最高裁判所は、スペインの欧州連合(EU)加盟により、ベルヌ条約第8条7項は欧州連合における非差別の原則を尊重した形で解釈されなければならないとした。

また、欧州連合司法裁判所(TJUE)におけるBohémeのケース(C-360/00)の判決を例に挙げ、1924年に逝去したプッチーニのオペラ作品に対するドイツでの保護期間の認識について言及した。なぜなら、プッチーニの母国イタリアでは、知的財産の保護期間がドイツよりも短かったからである。

TJUEは、他のEU加盟国出身者の作品に対して、EU加盟国の基準により認められた知的財産の保護期間が、作者出身国の保護期間よりも短いことは、CE条約に反するとした。

最高裁判所の判決により、イギリスにおいては既に数年以上前から公有財産と見なされている一方で、スペインにおいてはChestertonの作品の保護は継続されるという結果となった。

この判決により、1987年以前に亡くなった作者の相続人に対して、将来的に知的財産保護期間を10年間延長する請求が行える可能性が明確となった。

 

 

ヴィラ法律事務所

 

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2015年6月12日