ブランドのサイズにかかわらず、現在のマーケティング戦略の潮流の一つに、インフルエンサーマーケティングがある。しかしながら、現状ではインフルエンサーとの契約に対する業界の配慮が欠けている。

ブランドが、スポーツ選手、歌手、モデルといった著名人を使用し、より影響力のある広告を介して商品を大衆に届かせようとすることは何ら目新しい事ではないが、現在の傾向は、さほど有名でなない顔を好む傾向があり、それでも以前と同様に効果を生んでいる。

しかしながら、当該関係の中で忘れられがちなのは、契約の存在である。

インフルエンサー達は、広告上のエンゲージメント観点から疑いなく重要な媒体である。彼らはアドバイス、生活スタイルや生活習慣を提供することにより全ての消費者グループのプロファイルを動かすことができる。しかし企業間の関係ではないため、最低限の成功保証を得るための両当事者のコミットメントを書面に規定する事は、重要視されていない。

広告パートナーシップ契約時の重要な留意点は、以下となる。

  • 条件及び価格

広告の目的・内容をできる限り詳細に記載し、その結果、金銭かその他の方法であるかは 別として、受領すべき対価を明確にする必要がある。

  • 画像の著作権

インフルエンサーとの契約におけるブランド画像の著作権の譲渡は、最も重要な留意点の一つとなる。期間を限定する必要があり、使用回数に関しても制限される場合がある。このような制限は、インフルエンサーとの関係性に非常に重要な側面となる。長期にわたるブランド画像の使用権の付与は、明らかに、契約報酬とは不均衡なブランドの利益が発生することとなる。契約書に無期限と記載のあることが多いブランド画像の使用権の付与は、乱用的である。

当該見解は何年か前にスペイン最高裁判所判決内で明言されている。使用権の付与は、常に取消し可能な同意であり、無期限に付与されると理解することはできないとみなしている。故に、ケースに即して期間が限定される必要があり、その場合でも、当事者は同意を取消す権利を失わないとした。しかしながら、当該ケースでは、一定の損害が発生する可能性がある。

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  • 法令遵守

インフルエンサーとの契約においては、広告契約の締結の際と同様、広告業基本法、情報社会サービス及び電子商取引法等の法令を遵守しなければならない。

上記は、偽装、不当広告に陥らないために、特定の実用的な義務を伴う。特に、ここで取り扱うインフルエンサーは、情報発信時に、その情報が広告コンテンツであることをコンテンツ/出版物の中に明確な痕跡を残す必要がある。これは例えば、#ad、#advertising、#advertising というのハッシュタグを加えるだけの簡単な行為で事足りる。にもかかわらず、多くのユーザーはこの義務の履行を忘れ、その場合管轄官庁から最大3万ユーロの罰金を科せられる可能性がある。

同様に、広告協会の自主監視機関に関するブランドの義務を忘れてはならない。例えインフルエンサーとの契約を通じてであっても、すべての広告キャンペーンにおいて、広告協会団体が発行する規制に従う義務がある。

  • 知的財産権

ここでは、コンテンツに関する権利に言及する。広告目的に作成されたコンテンツの権利の所有者が誰となるのかを明確にすることが重要となる。つまり、コンテンツがブランドに帰属する(TVCM撮影の場合と同様に、出演者はCMコンテンツの権利を保持しない)場合と、インフルエンサーに帰属する場合がある。しかし、現在では、コンテンツの露出や再生をコントロールするのはインフルエンサーであり、コンテンツの所有権はインフルエンサーにあるのが一般的とされている。

  • データ保護

最も物議を醸している別の側面は、広告の一環としてのプレゼント等の抽選の開催時に、規制を守らずに参加者からデータを収集しているケースである。データ保護規則を遵守するためには、該当する会社がデータを処理・使用することを事前に必ず対象者に知らせなければならないことを念頭に置いておく必要がある。これには、各案件と使用するプラットフォームに合わせた通知を作成する必要がある。サイト経由で定期購読を義務付ける文例を選択するのとは、少し異なる。

結論 

多くの場合、パートナーシップの報酬もしくはブランドが得る利益は比例して低い。しかしながらそこから生じる結果は非常に重要となり得る。疑問が生じた場合には、保証のためにも適切なアドバイスを受けることを忘れてはならない。また契約書はできる限り書面にすべきである。そうすることで、将来的な誤認識の回避が可能となり、確固とした根拠を持って異議を申し立てることが可能となる。

 

 

テラン・アンドレアス (Andreas Terán)

ヴィラ法律事務所

 

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2020年5月15日