2017月7年13日付スペイン最高裁判所判決第447/2017号(民事第1法廷)は、契約締結後に偶発的に生じた客観的事由に基づく契約義務の免除は金銭債務には適用されず、また、「事情変更の法理」規定は、資金調達の困難が予測可能であった場合には、適用されないとの判断を示した。

当該判決を引き出した案件は、不動産売買契約に定められた義務の履行が不可能であることを理由に、売買契約の解除及び、被告に支払った金額の全額返還を原告が請求したことに始まった。被告はこれに対して、原告には契約履行義務があり、被告は原告の支払った金額を保持する権利を有すると主張した。サバデル第一審裁判所 (バルセロナ県)第7法廷における2010年5月7日付判決第91/12号は、原告の請求を退けるものだったため、原告は控訴した。

当該控訴申立てについて、バルセロナ地方裁判所第17法廷が判断を行った。必要手続き経た後、2014年12月3日、第一審判決を覆し、売買契約の解除及びその結果として原告への金銭全額払い戻しを認める 判決を下した。当該判決では、被告が、不動産購入に必要な融資を原告が受けられるようにすることを、口頭で約束しておきながら、その後、原告自身で融資の申請をしなければならず、原告が融資を受けられなかったことの証拠も存在しており、また、不動産購入代金の支払いも不可能であったという原告の主張に言及がされた。

最終的には最高裁判所は、第二審の被告が申し立てた上告請求に以下のような判断を下した。手続き上の侵害を理由とした控訴の第一の主張は棄却された。同じく上告人となった被告が提出した上告申立てに関しては、以下の理由によりその主張が認められた。

  1. まず、金銭債務者には不測の事情変更による義務履行免除は適用されない。つまり、予測不能な事情の変化によって帰責自由のない義務の履行不能となるような場合、及び、本来ならばそこにあるべき特定のものが喪失している場合(民法第1182条)、または、義務の不履行を正当化する客観的な事由がある場合(民法第1184条)に、金銭債務者の履行義務は免除されない。
  1. 他方、スペインの法制度において、事情の変更による契約の修正または解除に関する一般規定も、債務者の経済状況の悪化を理由に債務履行義務が免除されるという規定も存在しない。しかし、実際のところ、スペインの法制度は「合意は拘束する(pacta sunt servanda)」の例外を認めており、ある特定の状況においては柔軟な対応がされる。この意味において、資金調達へのアクセスに関して、契約時には予測不可能な変更 が存在したと評価され債務者が債務免除されるためには、資金調達に予期不可能な問題が起こったことを証明する必要があり、購入者の資金調達が主観的に困難であることを主張するのみでは十分と言えない。つまり、資金不足の危険性を売り手に負わせること、及び結果として契約合意を履行しない理由にはならない、とした。

最高裁判所は、これまでの判例と一貫する立場をとり、一般的には、契約両当事者が売主の資金不足のリスクに加担したのでなければ、資金調達は買主が負うべきリスクであるとして、買主が自らの資金調達が困難であることを理由に契約を解除することを否定した。例えば、売主が買主に代わって第三者と交渉する融資において、代位返還によって必要な融資を受けられると保証した場合などは、このケースに該当する。

 

 

マルチネス・マーク (Marc Martínez)

ヴィラ法律事務所

 

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2017年10月13日