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2025年9月3日付最高裁判所判決(EDJ 2025/696789)は、代理店契約終了後の顧客補償金の算定基準および上限に関する問題を扱ったものである。本件は、20年以上にわたる継続的な取引関係を有していた代理店と、Vodafone España, S.A.U.(以下、VODAFONE)との間で生じたものであり、契約関係はVODAFONEによる一方的な契約条件変更により終了した。

事案の背景

原告である代理店は、VODAFONEが一方的に適用しようとした新たな経済条件を拒否した後、スペイン代理店契約法(Ley 12/1992、以下「代理店法」)第28条に基づき、顧客補償金の請求訴訟を提起した。両者は1996年から取引関係を維持しており、契約は随時更新されていた。

紛争は、VODAFONEが一方的に契約条件を変更し契約を終了させたことから発生した。原告は、契約終了により補償金請求権が発生すると主張しており、一方、VODAFONEは、契約終了は原告の新条件不承諾によるものであり、補償金の支払い義務はないと主張していた。原告は、自身の活動がVODAFONEの顧客獲得および維持に大きく貢献しており、契約終了後もVODAFONEがその利益を享受する点を指摘した。

下級審の判断

第一審および控訴審は、代理店が顧客補償金を受け取る権利があることを認めたが、法定上限額から大幅に減額した。第一審では算定額の60%が適用され、控訴審では40%の減額がなされた。

減額の理由として考慮された要素は以下の通りである:

  • 契約関係の継続期間(21年間)
  • VODAFONEによる広告・マーケティング活動
  • ブランドの知名度および企業イメージ

最高裁の判断

上告では、法定最大額からの減額が許されるかどうかの判断を中心にあった。最高裁は、過去の判例(例:STS 582/2010)を引用し、代理店法第28条3項および欧州指令(86/653/CEE)の明確な強行規定性を確認した。

最高裁は次のように述べている:

「契約終了時に法定上限の補償金を得る権利を事前に制限する条項は無効である。」
「この顧客補償金の特別な重要性は、欧州指令第19条における『代理店の権利保護』の趣旨によっても確認される。」

つまり、顧客補償金は、法定上限(直近5年間の年平均報酬または契約期間がそれ未満の場合はその期間の平均報酬)を下回る額で減額することはできない。

企業が一方的に制限することも、裁判所が公平裁量で減額することも許されないとされている。

最高裁は過去の判例を明示的に引用している:

「事前に代理店の補償金請求権を制限する契約条項は無効である。」(STS 582/2010)

このように、顧客補償金は、契約上の取り決めによっても、裁判所による後の減額判断によっても減額されることはないという原則が再確認される。これらはいずれも、指令および代理店契約法(第3条1項および第28条)によって規定された補償制度の強行的性質に反するものである。

結論

最高裁は、顧客補償金の額を直近5年間の年平均報酬に基づいて算定し、法定利息を加えると決定した。

本判決により、顧客補償金の算定は法定上限の適用を厳格に遵守することが求められ、契約条項や裁判所による減額判断は認められないことが再確認された。

 

 

松岡研吾

ヴィラ法律事務所

 

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2025年 10月24日