去る10月19日、欧州司法裁判所(TJUE)は、スペイン現行法における損失先導商品の販売禁止は、一般的には、EUの法令に反するとの判断を示した。

当該案件は、ムルシア県行政裁判所第4法廷が欧州司法裁判所に、国内市場の消費者に対する不公正な企業間商業慣行に関する EC 指令 第25号、2005/29 / EC(以下「EC指令」と呼ぶ)に関し、先行判決を求めたことに端を発する。

本件申立ては、Europamur Alimentación, S.A (以下「EUROPAMUR」という)に対する行政過料が科されたことに由来する。EUROPAMURは、大手スーパーマーケットチェーンの競争の影響を直接受ける地元のスーパーマーケットや近所の小売店に、家庭用品や食料品を卸売している会社である。前述の罰金は、ムルシア県商業及び消費者保護センターによって、EUROPAMARが損失先導商品の販売、すなわちコストを下回る価格での販売を行い、その禁を破ったと判断したことによって、科されたものである。当該行為の禁止は、スペインの小売業者に関する法律 (以下 「LOCM」と呼ぶ)の第14条に規定されており、以下の二つの例外を認めている。一つは、販売に影響を与えうる競合他社の販売価格と同額にするために、あるいは消費期限が近づいており廃棄処分になりかねない商品のために、である。

EUROPAMURは、行政過料の撤回を求めて、他の理由とともに、小売店は他の競合店の価格に揃える必要があり、処罰された行為は消費者の利益に背くものではないと反論した。さらに同社は、不公正な商業慣行に関するEC指令が不十分に国内法に移行されたために、本件の処罰はEU法に反している、との反論を加えた

ムルシア県行政裁判所第4法廷は、本件審理を一度停止し、不公正商業慣行に関するEC指令が、損失先導商品の展示あるいは販売に関する一般的な禁止を含み、EC指令自体に含まれていない基準に基づいてその禁止に対する例外を規定している国内法を排除するものである、と解釈されるべきかどうかを欧州司法裁判所に判断する手続をとることを決定した。

LOMCの目的に関して、法律の前文において、本法律の目的は消費者を保護することにあることを示していることを想起すべきである。 さらに、本件で問題となっているような卸売業者と小売店との間の販売に関わる状況にあっても、最終的には消費者にも波及するため、上記目的は達せられる必要がある。

損失先導商品の販売禁止が判例法において一般的な性質を持つものかどうか、当該禁止の例外事項を案件ごとの事実状況に照らし合わせて国内裁判所で判断すること認めるかどうか、本件で問題になっている損失先導商品の販売が「不公平」か、否か、などの問題を不公平な商慣行に関する欧州の基準に照らすと、EC指令は、ある商業行為を「不公平」と見なし、故にそれを禁止する状況を決定する明確な基準を定めていることを思い起こす必要がある。

欧州司法裁判所は、本EC指令が、企業の不公正な商慣行に関し消費者との関係においてすでに完全に調和させている規則であることを強調し、EU加盟国は、例え消費者をより保護することを保証するものであったとしても、本指令に定められている以上の制限的な手段を国内法に含むことはできないとの見解を示した

結論として欧州司法裁判所は、スペインの国内法で定めている損失先導商品の販売禁止における二つの例外は、EC指令に予見されていない基準なため、適用外であることに議論の余地はない、との判断をした。

 

 

エステル・ウゴ (Hugo Ester)

ヴィラ法律事務所

 

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2017年10月27日