1.脆弱性というコンセプト

脆弱性のある貸借人とは、以下の2要件を満たす者をいう。

a) 失業者、ERTE対象者(Expediente de Regulación Temporal de Empleoの略称: 一時的雇用調整)、 介護、監督義務のための時間短縮勤務者を選択した被雇用者、又は、雇用者の立場の場合、又は類似な状況にあり、収入の大幅な収入減少を示している場合: 賃料の支払い保留請求の前月の世帯収入が1,613.52ユーロ(障害認定等を受けている場合には限度額も増額)未満であること。

b) 賃貸料、生活費及び光熱費等ライフライン使用料(電気、ガス、水道、ガス代、通信、管理費)を加えた総額が、家族全員(賃借人、法的別居のない配偶者、または法的パートナー、法的別居のない配偶者、または法的パートナーとの間の子供で該当住居に居住する)が受領する純収入の35%以上であること。

賃借人又は世帯の一員が、スペインにおいて不動産所有者もしくは用益権者である場合(遺言相続、又は法定相続により分割の権利を有する場合はこれに該当しない)脆弱性は認められない。

上記は、賃借人-所有者に使用権があることを要件とする。(離婚を理由に住宅にアクセス権がない等場合は除外する)

    • 脆弱性の証明方法
      • 失業:

失業保険給付機関が発行する証明書で、失業給付金や訓練助成金の名目で毎月受領する金額の記載がある書類。

      • 自営業者の事業活動停止:

活動停止宣言に基づき、国税庁または自治州の管轄機関が発行する証明書。

      • 常住者数

i. Libro de familia と呼ばれるスペインの戸籍謄本にあたる書類、もしくは法定パートナー証明書

ii. 住民票。脆弱性証明書提出時から遡って6ヶ月の間の居住者証明が必要。

iii. 障害者、要介護者、労働活動にあたり永続的な療養必要性の認定書

      • 財産所有

全ての居住者に関し、不動産登記所のインデックスサービスにて所有不動産登記証明(Nota Simple)を発行・提出。

      • 債務者が脆弱性の要件を満たしていることに関する宣誓書

(脆弱性の宣誓書以外の)上記書類の提出が不可能である場合、提出不可能な理由を正当化する宣誓書(COVID-19関連理由である必要あり)を、非常事態宣言解除日より1ヶ月以内に提出すれば良いとする。

  1. 強制執行

非常事態宣言解除により、全ての行政手続き条件、期間の一時停止が解除された後、明渡し請求裁判手続きにある賃借人は法廷において、賃借人及び同居人が代替住居を用意することが困難であるため脆弱性の状態であることを証明した場合、明け渡し強制執行が一時停止される。

立退き日が確定していない場合、裁判の審査期間もしくは開催は管轄福祉サービス機関が適切だと判断する措置をとるまで、2020年4月2日以内を目処として、一時停止することができる。

裁判所書記官が脆弱性の状況にあると判断した場合、本脆弱性が生じた日に遡って、厳格に必要な期間の停止を命じる必要がある。

本強制退去の一時停止が、脆弱性の存在を認定された賃貸人に影響がある場合、裁判所書記官は、特別停止期間の承認、社会福祉措置の採択の可能性等を検証するために、管轄福祉サービス機関に連絡しなければならない。

  1. 賃貸借契約の延長

2020年4月2日から非常事態宣言解除後2ヶ月経過日までの間に、強制的もしくは黙示的の契約延長期間が終了する常住者用住居の賃貸借契約の場合、賃借人は6ヶ月間を限度とする契約延長を要請することができる。

賃貸人は、両者間の合意として他の条件が規定されていない限り、上記要請を承認しなければならない。

本観点に関しては、特に脆弱者を対象とするという明記がないため、いかなる賃借人に適用可能であると理解する。

  1. 支払いの猶予

常住用住居賃貸借契約を有する賃借人が脆弱な状況にある場合は、4月2日からの1ヶ月賃貸料の支払いの延期を賃貸人に要請することができる。ただし、両当事者間ですでに(全額もしくは一部金額の)支払い延期、もしくは免除が合意されている場合は例外とする。

合意がない場合は、賃貸人の地位により対処が異なるものとする。

a) 企業、公営住宅事業者もしくは投資用不動産の大口保有者(自然人あるいは法人で、車庫、物置を除く都市部物件を10件以上、または建築面積が1,500㎡を超えて所有する者)。

賃貸人は、7営業日以内に以下に提示するいずれかの決定を、明示的に賃貸人に伝える必要がある。

i) 50%の賃料減額

非常事態宣言発令が続く間は、賃借人による支払い猶予の要請月から始まって賃料を50%減額し、脆弱性が維持されている限り、最大4ヶ月間を限度として翌月からの支払いもこれを維持する。

ii) 上記と同様の期間、賃料支払い猶予承認し自動的に適用する。

延滞される賃料は、契約が有効である場合は、最低翌3年間の間に分割して支払われるものとする。契約の有効期間が3年以下である場合は、有効期間中に分割して支払われる。

賃借人には、いかなる罰金も、延滞賃料に対する遅延利息も発生しない。

b) 上記に言及する企業、公営住宅事業者、投資用不動産の大口保有者に該当しない者。(例えば賃貸人が、唯一の投資住宅を有する自然人の場合等)

賃貸人には、7営業日以内に賃貸料支払猶予もしくは分割払いの承諾が義務付けられる。あるいはこれを承諾しない場合は何らかの交換条件を明示的に賃借人に伝える必要がある。

賃貸人がいかなる支払い猶予条件を承諾しない場合は、賃借人は公的保証制度にアクセスが可能となり、手数料、利息なしで、返済期間も余裕のある融資申請を銀行で行うことを可能とする。

同様に、一連の経済的救済措置を規定し、脆弱な賃借人が契約賃料を支払うための申請を行えるようにする。(月額賃料900ユーロまで。100%の月額賃料対象)

 

更なる情報を知りたい方は以下までご連絡下さい。

Vilá abogados

va@vila.es

 

2020年4月8日バルセロナにて