本稿の目的は、2020年3月31日付スペイン勅令法第11/2020号により新たに導入された措置、特に商事会社及びその他の法人の運営体制関連の分析とする。

第一に、会社本体を司る機関の会議、つまり経営機関の会議及び株主総会(資本会社に該当しない法人の場合は、これらに準ずる会議)について述べる。

非常事態宣言下においては、定款に定めのない場合でも、ビデオ会議又は複式の電話会議による経営機関の会議及び株主総会(以前の勅令法では、不明確であった適用範囲)の開催を可能と規定した。電話会議は新しく導入された手段である。いずれにしても、電子通信又は電話による会議開催には、以下の要件を満たす必要がある。

(i) 経営機関のメンバー全員が必要な手段を備えていること

(ii) 経営機関の書記役が会議出席者の本人確認をすること

(iii) 上記を議事録に記載し、本議事録を各会議出席者に対しEmailによって直ちに送付すること

上記は、外出制限義務及び市民間の接触制限が会社の正常な運営を妨げることがないよう可能性の最大限の拡張を試みた結果と理解できる。しかし、出席者の本人確認の証明方法関する規定については、多くの疑問が生じる。当該規定は書記役に対し重大な責任を課すものであり、また、電話会議の場合は現実的な実行可能性について、例えば身元詐称の可能性、権限なき者の介入などを検討しなければならない。

加えて、株主もしくは取締役が異なる国々から株主総会や取締役会に出席した場合においても、会社本店住所において開催されたと理解することを明確にしている。より適切な基準が不足している以上、的確な判断といえよう。

第二に、年次計算書類の作成について、非常事態宣言の解除まで作成義務は一時的に停止され、非常事態宣言解除日から新たに3ヶ月間の期間が設定され再開される。しかしながら、非常事態宣言期間中に計算書類の作成及び会計監査の実施がなされた場合も、有効なものとして扱われる。ここで留意すべきは、これが単なる一時停止ではなく、新たに3ヶ月の期間が設けられるという点である。つまり、非常事態宣言発令以前に計算書類を作成していた会社に、現況下での経済的影響を考慮の上で本書を修正することを許容しているのである。

監査報告書作成(義務的もしくは自主的問わず)期間は、2019年度年次計算書類が非常事態宣言発令中に作成された場合、非常事態宣言解除日から2ヶ月間延長されるものと理解される。

計算書類の承認にかかる株主総会は、計算書類作成期間終了日から3ヶ月以内の開催が必須とされている。したがって、当該規定は年初から6ヶ月以内の承認を義務付ける一般規定に優先するものとなる。計算書類作成期間の延長に伴い、会計年度終了から6ヶ月間以内という会計書類承認の一般規定期間を超える可能性があるが故の措置となる。

3月14日以前に株主総会の招集通知が発行されており、総会開催予定日が3月14日以後の日付となっていた場合、会社の経営機関は、総会開催予定時間の48時間前までに会社のウェブサイト、あるいはウェブサイトを有さない場合は官報に公告することにより株主総会の開催予定日時と場所の変更、又は、招集自体を取消すことができる。招集を取消す場合、会社の経営機関は非常事態宣言解除日から1ヶ月以内に株主総会を招集しなければならない。

当該勅令法第11/2020号において新たに規定された重要事項は、収益計上の変更可能性に関するものである。これにより、すでに計算書類を作成済みで、計算書類及び収益計上案承認のための株主総会を招集していた会社の取締役員は、3月18日以降、年次報告書に含まれていた収益計上案を他の案に置換することができる。

当該修正は、COVID-19に起因する影響に基づいて会社の経営機関により正当化される必要がある。これは、不測事態の発生の結果、配当金を準備金に割当てるなど、当初予定の利益配分方法とは異なる配分を可能とするための措置であると理解する。

上記証明に加え、会社が計算書類の監査を要する場合は、署名時に監査役が新収益計上案の存在を知っていた場合には、監査の意見の修正はしなかった旨を表明する書面を添付し提出なければならないとする。

既に収益計上案を議案に含む株主総会が招集されていた場合は、会社の経営機関は収益計上案を当日の議案から撤回することができる。ただし、当該撤回決定は、既に招集される株主総会の開催前に公告されなければならない。

上記により、収益計上案承認を次回以降の株主総会に委ねたまま年度計算書類の承認行うことを可能とした。この場合、収益計上案承認は補完的証明書を介して商業登記所に提出されることとなる。

一方で、会社の解散に関しては、非常事態宣言発令前もしくは発令中に定款で定める解散事由が発生した場合、又は権利としての解散を請求する場合、解散決定を決議する株主総会の開催を非常事態宣言解除までの延期可能としている。(定款に定めた存続期間満了による場合を除く。このケースでは非常事態宣言解除から2ヶ月が経過するまで解散が生じないものとする。)

非常事態宣言発令中に法定解散事由、又は定款規定の解散事由が生じた場合、該当期間に発生した会社債務に関する取締役の責任を免除している点は特筆すべき事項である。

最後に、2020年3月17日付スペイン勅令法第8/2020号に定める不可抗力又は技術的、経済的、組織的、及び生産的事由によるERTE措置(Expediente de Regulación Temporal de Empleo: 一時的雇用調整)に関し、破産手続き中の会社も、契約期間の短縮、労働規約の適用等、特定規定を損なうことなく全てを含む措置を採用可能としている。

 

 

ヴィラ法律事務所

 

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2020年4月3日