債権管理者及び購入者関連法案:スペインNPL市場の包括的規制

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滞留債権と規制

2025年3月14日付にて、欧州議会指令第2021/2167号(以下「EU債権指令」)をスペイン法に置換する「債権管理者及び債権購入者関する法案」(以下「本件法案」)がスペインの官報に掲載された。これにより、消費者債権契約法(Ley de Contratos de Crédito al Consumo)や不動産債権法(la Ley de Crédito Inmobiliario)などの主要規制を改正することとなる。本件法案の主な目的は、債務者の保護を確保しつつ、滞留債権や不良債権(英語Non-Performing Loansから、以下「NPL」という)流通市場の発展のための調和ある法的枠組の確立にある。

本件法案によって、スペインは、債権譲渡業務の透明性の促進をし、金融効率と債務者権利間のバランスをとりながら、債務不履行時の管理部門専門化の方向へ前進することになる。

スペインにおいてNPLとは、回収困難となるリスクが高いか、すでに90日を超えて支払いがない貸付金を指す。金融機関にとって収益性に影響を及ぼすNPLの蓄積は、新規与信の障害となる。そのため、2008年の金融危機およびCOVID-19危機による経済的影響を受けて、EUはNPL削減のために包括的な戦略を採用した。

2021年11月に承認されたEU債権指令は、本戦略の柱の一つで、効率的かつ透明性の高い、共通のルールを備えたEUのNPL市場の展開を促すことを目的にしている。これにより、ノンバンク事業体(投資ファンド、アセットマネジメント会社等)が不良債権のポートフォリオを取得し、認可を受けた第三者を通じて、専門家としての債権管理を行うことを可能とした。

適用範囲および範囲の拡大

本件法案はEU債権指令の主要な要素をスペイン国内法に置き換えているが、以下に挙げるいくつかの重要な点で適用範囲を拡大している。

– 銀行等の金融機関に加え、証券化の対象となる債権を保有しているオリジネーターとして通称スペインでEFCと呼ばれるカード会社やリース会社といったクレジット機関も含まれる。

-スペイン銀行は、債権管理業務を認可対象となる新業務として規制する。

– 特定ケースの返済計画の提示等、欧州の立法府が求める以上の債務者保護義務を追加する。

本件法案の主な新規事項

  1. 債権管理者(英語でcredit servicer)とは

債権管理者/サービサーとは、債権購入者に代わって、債権の管理(回収、再交渉、強制執行を含む)に責任を負う法人、つまり債権回収会社を指す。業務を遂行には、スペイン銀行から認可取得し、特定の登録簿に登録する必要がある。

当該認可は、既に認可取得済み法人(銀行、EFC等)の自社債権処理の場合には必要ない。しかし、第三者による購入債権管理及びNPL回収活動を専門・組織化する法人には必須となる。

  1. 債権管理者の選任義務

不良債権購入者が金融機関またはEFCでなく、さらに債務者が自然人、零細もしくは中小企業である場合、債務者との適切な関係の確保のために、認可を有す債権管理者を選任しなければならない。本要件は、スタンダードな規制と監督の対象事業体によって最脆弱な債務者を保証することを目的とする。

  1. 債務者通知と保護義務

本件法案は、債務者に対しいかなる回収行為を実行する前に、新債権者及び選任された管理者の身元を含む債権譲渡の通知義務を定めている。

さらには、債権購入者は、債務者が元の債権者との契約で有していた権利及び保証を尊重しなければならず、これには、特定の事業者が適用対象である可能性のあるスペイン法規制「適正業務規範」(Códigos de Buenas Prácticas)に由来するものも含まれる。本件法案は、同様に、債権管理者に、効果的な顧客サービスサポート体制、内部債務再交渉方針、社会的脆弱者の公正な扱いのためのプロトコルの確立を求めている。

  1. 返済計画の提示義務

EU債権指令に定める新規事項に関連し、スペイン政府は消費者債権契約法(第30条2項)に、債権者(金銭の貸主)が弱者である自然人の債権譲渡を意図する場合、債権者はまず、一部免除の可能性を含む返済計画を提示しなければならないという、追加的保護措置の導入を試みている。当該措置は、債権が第三者に譲渡される前に、債務者が合理的な合意に達する可能性喪失の回避を意図している。

  1. 債権購入者の義務

債権購入者は、購入債権の適切な評価のために十分な情報を確保しなければならず、購入後スペイン銀行に購入を通知しなければならない。債権購入者がEU域外に居住する会社である場合、EU域内に法定代理人を選任し、適用規制の法的枠組みの遵守を保証しなければならない。

  1. 監督・制裁体制

スペイン銀行は、管理者や購入者、オリジネーターに定める義務についても、認可、監督、必要に応じて制裁を行う権限を有する当局となる。同時に、債務者(金銭の借主)のための特別苦情処理制度として、当初はスペイン銀行に窓口を設置する。現在立法草案中となるが、後には、金融顧客擁護のための独立行政機関がこの窓口を担うことになる。

結論として、本件法案は、スペインのNPL市場規制の決定的な一歩を意味しよう。スペイン国内法への非常に野心的な置換えを通じ、スペイン政府は、一方で、EU規制と調和した安全な環境下での、プロフェッショナルな不良債権譲渡および管理の促進、他方で、特に脆弱債務者保護強化といった、二つの主要目的のバランスと模索する。

最終的な承認が待たれる間、当該条文は、銀行、ファンド、サービサー、消費者らを含む様々な金融事業者に、法的確実性の向上、スペインのNPL市場の適正な活動に貢献するような、予測可能で首尾一貫した枠組みを提供する。

 

 

アレクス・サントラリア(Álex Santolaria)

ヴィラ法律事務所

 

より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。

va@vila.es

 

2025年4月4日

2025-04-08T16:25:02+00:0004/04/2025|企業再生, 倒産|

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