2019年2月16日、EU加盟国間の官僚的な業務の削減を目的とした欧州規則第2016/1191号(以下「本規則」という。)が施行された。具体的には、本規則は、他の加盟国において効力を有するために必要とされていたハーグ条約に基づくアポスティーユ証明によるアポスティーユやいくつかの公文書についての翻訳の必要性を排除するものである。

本規則の施行前、欧州市民が、自国が発行した公文書を他の加盟国に提出する場合、アポスティーユと呼ばれる証明書を取得し、当該文書の提出先加盟国の公式言語の翻訳を添付しなければならなかった。

本規則により、以下の手続きが簡略化される。

(1) ハーグ条約に基づくアポスティーユ証明による公文書のアポスティーユ要件の廃止

(2) 公文書の提出時における原本及び真正コピーの提出義務を廃止。加盟国は原本還付手続きを受け入れなければならない。

(3) いくつかの公文書の翻訳提出義務を廃止。公文書を発行する国はEUのすべての公式言語による多言語の文書によらなければならず、文書の提出先国は、特別な状況がない限り、翻訳を要請することはできない。

(4) 公文書の公正翻訳が要請される場合には、いかなる加盟国で作成された公正翻訳を受け入れなければならない。

上述にかかわらず、加盟国の行政機関は、提出された文書が本物であるかどうかに疑いがある場合には、当該公文書の真正性を発行国の行政機関と確認することができる。

しかしながら、本規則は以下の制限を置いている。

(a) 下記の文書は限定的に「公文書」と理解される。

a. 裁判所が発行した文書

b. 行政機関が発行した文書

c. 公正証書

d. 私文書に付された正式な証明書

e. 外交文書及び領事文書

(b) 適用領域については、下記のように大きな制限が設けられている。

a. 多言語形式での書類を発行する義務がある領域:出生、生存、死亡、婚姻、事実婚登録、住民登録、犯罪歴の有無の証明書

b. 多言語形式での書類を発行する義務がないその他の領域:名前、離婚、法的別居又は婚姻事実の抹消、事実婚登録の取消し、別居、及び抹消。子供の認知、養子縁組、国籍、自治体選挙における選挙権・被選挙権登録及び欧州議会への選挙件登録の解消の証明書

本規則の課す義務が、すべての種類の文書、全ての領域に適用されないことは事実だが、本規則の発効によって官僚仕事が簡素化され、EU内における真正性の厳格なコントロールに大きく貢献することとなるだろう。 それはすなわち公的文書を扱う法律・行政書士事務所、より具体的には欧州市民の負担軽減に繋がることとなろう。

 

 

ブランコ・ペドロ (Pedro Blanco)

ヴィラ法律事務所

 

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2019年3月15日