2017年10月7日付の官報にて、2017年10月6日勅令法第15号「企業の国内における移転に関する緊急措置」(以下「勅令法」)が公布された。この勅令法により、改正資本会社法第285条第2項の修正がされる。

改正資本会社法第285条第2項は、会社が国内で本店移転を行う場合、会社の定款に異なる規定が設けられていない場合に限り、その決定権限は経営組織(取締役や取締役会)にあると規定している。

この条文の解釈において、二つの解釈の見解が存在していた。そのうちの一つによれば、経営組織が本店移転の権限を有することについて「異なる定款の規定」とは、株主総会が本店移転について決める権限を有していると定款に規定があることである、と解釈された。他方の見解によれば、会社の定款で単に補足規定を複製さえすれば、国内の本店移転の決定権限が経営組織に属することに関する株主のその時々の自主性が示されているといえる、と解釈された。この解釈に従えば、「異なる定款の規定」は、改正資本会社法の施行後に、改めて経営組織に本店移転決定権限を与えない旨の明確な意思表表示をする定款変更がされた場合にのみ、存在することになる。

今般の勅令法は、(i) 改正資本会社法第285条第2項は、原則として会社が国内で行う本店移転の決定権限は経営組織に属するとしていること、そして、(ii) もし株主が会社の本店移転の決定権限は株主総会が持つべきだと考える場合には、経営組織に権限が属することを明白に否定する定款変更を行わなければならないことを目的としている。

本勅令法が施行される結果、改正資本会社法第285条第2項の規定は以下のとおり修正される。

「前項の例外として、経営組織は国内で行う本店移転の決定権限を有するものとする。ただし、定款にそれと異なる規定がある場合を除く。経営組織が本店移転の決定権限を有さないことを定款で明確に定めている場合のみ、定款にそれと異なる規定がある場合と解される。」

さらに、本勅令法は経過規定として、以下の定めを置いている。

国内での本店移転にかかる決定権限が経営組織に属さない旨を明確に宣言した定款変更が、本勅令法の施行後に承認された場合のみ、定款に異なる規定があるものとみなされる。

つまり、現行の定款で本店移転の権限は株主総会に属する旨の規定を置いている会社であったとしても、当該定款の規定が本勅令法の施行後に定款に盛り込まれたのでない限り、当該定款の規定は国内における本店移転については効力を有さず、したがって、経営組織が決定権限を有することになる。

本勅令法は官報での公布日の翌日、10月7日から施行された。

 

 

大友 美加

ヴィラ法律事務所

 

より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。

va@vila.es

 

2017年10月20日