スペインにおいてビジネスを始める際、まず投資家が直面するのは、会社設立決定時から実際に会社が商業登記所に登記されるまでかなりの時間を要する点である。通常このプロセスには3週間から1ヶ月ほど要する。会社設立プロセスにかかる時間短縮のため、政府は会社設立を簡略化するシステムの導入を決定した。

簡略化プロセス

2015年5月29日に電磁的方法による合同会社の設立に関する規定を定めた勅令法が承認された。当該勅令法の目的は、合同会社設立に要する時間の削減である。

当該法は2013年に施行された起業家法(Ley de Emprendedores)をベースとしている。当該法において、合同会社は、通称“DUE”と呼ばれる電磁文書を通じて会社設立公正証書及び定型化された会社定款を提出することで設立可能となった。会社の設立は、CIRCEと呼ばれる会社設立を監視する行政機関が管理するオンライン・システムを通じて手続きがされる。このシステムでは、会社設立の公正証書の作成後12営業時間内に設立申請を行い、登記官は6営業時間内にその検証を行うこととされる。現在、最長で15 営業日要するのに比べると、かなりの時間が短縮されることになる。

当該勅令法は、合同会社設立のための公正証書に含むべき内容について詳しく定めている。会社設立公正証書に含まれる会社定款は、予め定められている定型モデルとなり、一部の内容を除き、公証人や商業登記官による内容の検証を要しないため、結果として、登記にかかる時間を大幅に短縮することができる。

上記高速プロセスを実務で用いるために、政府は電子公証カレンダー(AGENDA ELECTRÓNICA NOTARIAL)を設置することとし、2015年9月より機能開始予定となっている。当該カレンダーは法務省によって管理され、希望者は会社設立の公正証書作成の際の公証役場の空き状況を確認することができる。これにより、会社の設立希望者は数分で公証役場の予約をすることができる。

また、新たに中央商業登記所内に商号データベースを設置する。会社の商号予約は、オンラインで申請をし、回答は中央商業登記所から証明書の形で郵送される。当該証明書の取得にかかる日数は3営業日ほどだが、申請が通るかどうかは申請した商号が使用可能かどうかで異なる。現在は、事前に希望する商号の使用の可否を確認するシステムが存在しない。データベースの創設により、申請者は予め使用可能な1500ほどの商号を確認することができ、使用可能とされた商号を用いれば申請が承認されることが確約されることになる。

しかしながら、新システムの導入によりもたらされる利点は、すべての会社やすべてのケースにおいて適切であり、推奨されるというわけではない。その理由は以下のとおりである。

a) 株式会社等合同会社以外の種類の会社設立には適用されない。

b) 会社定款は定型の雛形を使用することになるため、株主が何か特定の事項について具体的な規定を定款に設けたいと希望する場合(会社の目的や経営システム等)には新システムの使用は適さない。

c) 新システムは非常に単純化されているものであり、海外資本による会社設立の場合、追加で満たさなければならない要件があるのかについては明らかにされていない。

d) その場で直ちに公証人と手続きを行うという理論は現実的な方法とは思えず、また公証役場が近隣に存在しない可能性も特に主要都市以外では否定できないため、電子公証カレンダーが必ずしも有効的及び実用的なものであるとは限らない。

 

ヴィラ・エドアルド (Eduardo Vilá)

ヴィラ法律事務所

 

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2015年6月5日