前回「非常事態宣言下の法人特別措置 (I)」と題した記事において、3月17日付勅令法第8/2020号第40条及び第43条が規定し、同日付で施行された私法上の法人に対する特別措置について言及した。しかしわずか15日後、そのうちのいくつかが3月31日付勅令法第11/2020号により部分的に修正され、4月2日付施行となった。具体的には対象となった特別措置(1)、 (3)、(4) 及び (6)について、本稿で分析する。

 

  1. 会社定款に定めのないビデオ会議開催

協会、一般に第三セクターとも呼ばれるシビル・ソサイエティ、商事会社、協同組合運営委員会の管理・執行機関、及び財団の理事会の開催方法に関し、すでに規定したビデオ会議による開催に加え、新勅令法では、複数電話会議による開催可能性が規定された。この2つの会議開催方法には、

(i) 全てのメンバーが必要な通信手段を備えていること、

(ii) 機関の書記役による本人確認が可能であり、かつ議事録に当該事項を記載し、出席者全員の電子メール宛に直ちに送付すること、という条件が付されている。

更には、ビデオ会議又は複数電話会議による組合員会議や株主総会の開催の可能性も追加された。本規定においても、

(i) 出席権限を有する者やその代理人が必要な通信手段を備えていること、

(ii) 機関の書記役による本人確認が可能であり、かつ議事録に当該事項を記載し、出席者全員の電子メール宛に直ちに送付すること、という同様の条件が付されている。

第一条件を満たすことは容易であろう。しかし第二条件は書記役に以下の3つの義務、

(a) 会議に出席者/会員の本人確認、

(b) 議事録に本人確認したことを明示的に記載、

(c) 出席者の電子メール宛に直ちに送付、を課すものであり、これらをどのように具現化するかは検討する必要がある。

 

  1. 会社定款に定めのない会議開催なき書面決議

協会、シビル・ソサイエティ、商事会社、協同組合運営委員会の管理・執行機関、及び財団の理事会は、非常事態宣言発令期間中、各機関の長が決定した場合、または2名以上の機関のメンバーの要請があった場合は、会議を開催することなく書面決議の方法で決議採択をすることができる。会議は法人本店住所において開催されたものとみなされる。

商事会社を対象とするものではないが、これらの場合も商業登記規則第100条規定に従い、証明権限を有する者は議事録に決議事項、及び、社員(株主、理事等)名もしくは該当する場合は取締役員名、該当執行機関が採用した意思決定方法を記載する。

 

  1. 年次計算書類(CCAA)作成期間の留保、及び3ヶ月間期間追加

ここでは、非常事態宣言発令中にある法人の管理・執行機関が行う年次計算書類作成の有効性について、留保期間の延長に関し、補足的な一文を最後に追加し明確にしている。

 

  1. 作成済み年次計算書類の監査期間の2ヶ月間延長

非常事態宣言下に作成される年次計算書類の(義務的監査に加え)自主的な監査期間にも当該2ヶ月間延長が追加された。

 

  1. 年次計算書類の承認期間

前年事業年度の計算書類を承認するための定時株主総会は、年次計算書類 の作成期間が終了してから3ヶ月以内とする。(通常の6月30日と置換される)

 

  1. 公告済み株主総会招集の修正もしくは取消し

非常事態宣言発令前に株主総会招集を公告済み且つ総会召集日が発令後の場合、会社の執行機関は株主総会開催予定場所及び日時の修正、もしくは招集合意の取消しを、最低48時間前に会社のウェブサイトに広告を掲載することにより実施することができる。会社がウェブサイトを有さない場合、«Boletín oficial del Estado»と呼ばれるスペイン官報に掲載する。招集合意を取消した場合は、非常事態宣言の解除日の翌月中には執行機関は新たな召集を行わなければならない。

本条項の後に「修正第6条」を追加し、計算書類を既に作成していた商事会社が、事業報告に記載した収益計上案をCOVID-19に起因した状況に基づく別の案に置換することを目的とする定時株主総会を4月2日(当該規定の施行日)以降に開催することを可能とした。会社の執行機関は、当該置換の動機の正当化を義務付けられる。同様に、会計監査人が署名時に新収益計上案を知っていた場合でも監査修正はなかった旨を表明する書面を添付しなければならない。

同様に、定時株主総会がすでに召集されている場合でも、会社の執行機関が収益計上案に関する議案を撤回することを可能とした。この場合定時株主総会の法定開催期間内に新たに株主総会を開催し、改めて議案として新提案の承認を提出する必要がある。会社の執行機関の決定は、すでに招集された株主総会の開催前に公告されなければならない。この場合も新収益計上案は、前段落にて言及した、同期の正当化及び会計監査人による表明書提出の要件を満たす必要がある。したがって、年次計算書類提出に関する会社の執行機関による証明は、この場合、年次計算書類の承認に限定される。収益計上案承認に関する補完的証明書は、後日商業登記書に提出されなければならない。

 

  1. 遠隔公証手続き

株主総会への出席、及び総会の開始宣言を要請される公証人 (スペイン資本会社法第203条規定) は、公証人の職務遂行を適切に保証することが可能なリアルタイムでの遠隔コミュニケーション方法を利用することができる。

 

  1. 商事会社における会社離脱権行使の一時留保

商事会社における株主の会社離脱権は、例え法定、もしくは定款の定めによる事由が存在しているとしても(資本会社法第346条以降規定)、非常事態宣言期間及び当該延長期間の終了まで、またケースによっては合意があるまでは、行使することはできない。

 

  1. 離脱組合員の持分拠出払い戻し期間の6ヶ月間延長

非常事態宣言下に組合からの離脱を決定した組合員に対する持分拠出金の払い戻し期間は、非常事態宣言が解除日から6ヶ月後まで延長する。

 

  1. 定款規定の存続期間満了後、商事会社の解散の2ヶ月延長

非常事態宣言下に会社定款に定めた設立期間が経過した場合でも、非常事態宣言解除日より2ヶ月が経過するまで、解散 (資本会社法第360条1項a規定)をすることはできない。

 

  1. 会社解散決議のための株主総会召集に関する取締役員義務の留保

非常事態宣言発令前に、もしくは非常事態宣言下で、会社に法定または定款で定めた解散事由が発生した場合、会社解散決議、もしくは解散事由の解決(資本会社法第365条規定)のための株主総会を召集する義務を会社の執行機関は有するが、法が定める招集期間は非常事態宣言が解除されるまで、一時的に留保する。

 

  1. 会社債務に対する取締役責任の免除

資本会社法第367条は、解散法定事由発生後2か月以内に、必要であれば会社解散決議を採択するための株主総会召集の義務が取締役員によって履行されない場合、取締役員の連帯責任について定めている。

本勅令法は、当該観点及び上記11の措置の結果として法定または定款で定めた解散事由が非常事態宣言下で発生した場合、非常事態宣言発令期間中の会社債務に対し、取締役は責任を負わないとしている。

 

  1. 破産手続き義務期間の留保

非常事態宣言下では、破産状態にある債務者は、旧破産宣告にあたる破産手続申立て義務を負わない。非常事態宣言解除日から2ヶ月間が経過するまで、裁判所は、非常事態宣言下及びその後の2ヶ月間に申請される必要破産手続き申立てを受領しない。自己破産手続き開始を申請した場合には、本手続きが後日に提出されたとしても、優先的に受理される。

非常事態宣言下においては、債務者が管轄裁判所に破産申立てを通知し、債権者とリファイナンス、法廷外支払い合意、もしくは事前合意案受諾のため債務交渉を開始した上で、2003年7月9日付第22/2003号破産法の第5条bisの5にて言及されている3ヶ月の交渉期間が満了したとしても、破産手続き終了の義務を負わないとする。

 

 

 

ヴィジャビセンシオ・カルラ (Carla Villavicencio)

ヴィラ法律事務所

 

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2020年4月10日