2021年4月13日付スペイン政府官報にて公示された2021年4月12日付法第5/2021号は、2017年5月17日付欧州指令第2017/828号を国内法令に置き換えることを目的としている。

この国内法令への置換は、立法勅令第1/2010号により承認された資本会社法の多くの条文の修正を要するものである。影響を受ける条文の大部分は上場会社に適用されるものであり、株主の長期的な関与の促進を目指している。他方、企業活動のその他の側面、具体的には、電磁的方法による参加や非対面形式での株主総会の開催についての規則の修正も必要となる。本稿では、これらの新規修正について簡単に言及する。

a) 電磁的方法による株主総会出席

当該改正により、スペイン資本会社法第182条の条文から「株式会社(sociedades anónimas)においては」という表現が削除されることになる。従前の条文では、株式会社については明確な言及があったものの、合同会社(socedades limitadas)については言及がなく、電磁的方法による株主総会への出席が株式会社のみに適用されるのか、合同会社にも適用されるのかについて疑問を残した。改正後の条文からは、株式会社への明確な言及が削除されることで、本条が株式会社にも合同会社にも適用がされることが明確になる。しかし、改正後の条文において、情報請求への対応については、「株主」(株式会社の株主を意味する)という言葉が「社員」(合同会社の株主を意味する)に置き換えられた。これは不正確であり、本条の明確化という目的に反する結果となっている。新しく生じる疑問は別として、立法者は、第182条が株式会社・合同会社の区別なく適用がされることを目的としたと解釈すべきである。

b) 電磁的方法のみで開催される株主総会について新しく規定する第182条bis

定款に条件が定められている場合には、株式会社又は合同会社は株主総会を電磁的方法により、つまり、株主又は代理人の物理的な出席なしに、開催することができるとした。本条項は網羅的ではなく、明確な規定がない事項については、対面方式に開催する株主総会にかかる従来の資本会社法の条項に則るとした。なお、上述の改正は、警戒事態宣言中の特別措置として講じられた勅令第8/2020号及び対応する規定が施行されている間は、定款に規定がない場合も電磁的方法による株主総会開催を認めるという措置を、妨げるものではないとした。

株主総会の電磁的方法による開催を可能にするための定款変更の承認には、株主総会特別決議、すなわち、当該株主総会の出席株主(代理人による出席も含む)が有する株式資本の3分の2以上の承認決議が必要となる。この特別決議の妥当性は疑わしいといえよう、なぜなら、多数派の押し付けを防ぐことはできず、また、定款変更は最終的には承認されるものの、株主総会は以下に挙げる要件、特に2番目の要件を満たさない限り、一人または複数の株主が必要な電磁的手段を利用できないと主張して有効な株主総会の開催を阻止する可能性が残るため、実施することができない。では、株主総会が電磁的方法による開催として既に招集がされており、総会開催日当日に一人以上の株主が技術的な欠陥のために総会に接続することができないと主張した場合は、どうなるだろうか。

たしかに、以下は総会の開催のために不可欠な条件となる。

  • 株主又は代理人の身元確認と正当性が正当に保証されていること。
  • 出席者全員が適切な遠隔コミュニケーション手段(電話会議やビデオ会議。総会の進行中にテキストメッセージにより補足される可能性も残すこと。)により会議に有効に参加できること
  • 上記の目的のため、会社は、技術的な状況及び会社の状況(特に株主数)に応じて必要な措置を導入しなければならない。

最後の技術的要件の規定は非常に曖昧であるため、各企業において何が「十分」であるか疑問を生じさせ、いずれ訴訟原因となりかねないであろう。立法者は株主総会書記役に対して株主出席者の身元及び総会への出席資格を確認する特別な義務を課しておらず、技術的手段に委ねているように思える。しかし、株主総会議長又は書記役による顔認識で十分なのか、それとも、出席者が自身の身元について厳正に宣言をする必要があるのか、又は、特定のコード等を介して総会にアクセスできるコンピュータアプリケーションを設計・使用する必要があるのか等の疑問は残る。同様に、不正アクセスにより、実際には株主又は代理人ではない者が株主総会に参加する可能性及び現実的なリスクの存在は言及されるべきである。加えて、株主総会の形式がデジタルであるが故に、出席権限のない第三者への株主総会の複製や、(オンライン・オフラインの)SNS等における容易な拡散リスクのような、コンフィデンシャリティやプライバシーの問題も存在する。これらの問題は、上場企業の株主総会においては軽微な問題かもしれないが、株主総会が秘密又はコンフィデンシャルな性質を有する問題や案件を直接かつ誠実に取り扱うためのフォーラムである中小企業においては、多くの場合において重要性を有する。

株主総会の招集については、招集通知は定款の定めにしたがって社員/株主に送付されねばならないが、出席者の登録、リスト作成、ならびに株主の権利行使と議事録内での記載のために、社員/株主が従うべき手続きについての情報を通知の内容に含めなければならない。

もう一つの特徴は、株主総会開始の1時間以上前までの出席者リストへの登録を、出席の条件とすることが禁止していることである。

電磁的方法によってのみ開催される株主総会の場合、会議は会社の本店所在地にて開催されたものとみなされる。

疑義がある場合には、改正法第182条bis第7項にて本条の条項は株式会社・合同会社のいずれにも適用されると規定している。

 

 

ヴィラ・エドアルド (Eduardo Vilá)

ヴィラ法律事務所

 

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2021年4月23日