2022年8月1日付スペイン官報にて、2022年7月6日付法的安全・公文書管理局(以下「公文書管理局」という。)決定が公示された。当該決定は、ある合同会社(S.L.)の資本準備金を用いた増資に関する公正証書の登記申請を、バレンシア商業登記所登記官が却下したことに関するものである。

本事案において 当該合同会社の株主総会は招集手続き省略方式によって2021年12月16日に開催された。同株主総会の議事録記載内容は次の通りであった。「当会社の資本の額を300,000ユーロに増資する。本増資は、バレンシア商業登記所から指定された監査人により監査された2021年6月31日付貸借対照表に基づき、利用可能な準備金を用いて行う。」当該株主総会決議にかかる公正証書には2021年6月30日付貸借対照表と、2021年12月17日付の監査報告書のコピーが含まれていた。

登記官は当該公正証書の登記について、以下の2点を理由に登記を拒否した。

  1. 増資の参照情報とした貸借対照表について株主総会の承認がされたどうか明記されていない。
  2. 監査報告書の作成日付が株主総会開催日よりも後である。

この却下通知に対して、会社は以下を主張し異議申し立てを行った。

  1. 本件増資決議は、招集手続き省略総会において満場一致にて決議されたものであり、増資が承認されたと同時に、その基礎となる貸借対照表も承認がされたものと考えることができる。
  2. 準備金を用いた増資の場合に要請される監査人による貸借対照表の検証には、二重の機能がある。一つは、第三者に対するものであり、増資額について企業に実際に資産があることを保証する機能である。もう一つは、株主への情報提供とその利益保護の機能である。1つ目の機能は、監査報告書が増資の承認及び実施決議にかかる公正証書に含まれることで、満たされている。また、2つ目の機能(内部的機能)については、増資承認決議が招集手続き省略総会において満場一致でなされていることを重ねて主張する。

公文書管理局は、以下を根拠として、本件異議申し立てを認め、商業登記官の評価を取り消した。

第一に、公文書管理局は、株主総会の決議において「本増資オペレーションの参照となった貸借対照表の承認に関する特別な言及は存在しない」こと、また、本件において確認できる監査報告書の日付が株主総会開催日より1日後の日付であることを認めた。

しかしながら、この種の合意について、公文書管理局は繰り返し次のように宣言している。「準備金を用いた増資は、会計の単なる1オペレーションによる会社の自己金融であり、資金を貸借対照表の負債の部から他の会計区分に移すのみである。したがって、自己資本(資本金及び準備金の合計)が変わらないことを鑑みると、資本の量的な変化を意味するものではなく、会社資産についても同じことが言える。」「このように移動された資金は、準備金として利用可能であった状態から、資本として利用不可能な状態へと性質が変わるため、当該資本の質的変更が生じると言える。このため、会社の資産におけるこれら資金の有効な存在とそれを資本へと移動させることが可能であることは必ず正当化されなければならず、法によれば、この正当化は監査役(会社の会計監査人または取締役の要請により商業登記感によって指定された監査役)によって検証され、可能な限り事前に承認された貸借対照表によりなされなければならない。」

上述の見解によれば、貸借対照表の事前承認は、株主に提供された特定の貸借対照表を参照してなされた株主総会の決議に対してなんらかの追加保証を与えるものである。したがって、決議が招集手続き省略総会において満場一致でされているならば、この事前承認により与えられる保証については株主自身の意思により失効する。

監査報告書の日付に関する不備に関して、公文書管理局は、株主総会の審議のために提出された貸借対照表と監査役の検証がされたものは同一であることを考慮しなければならないと述べた。また、公文書管理局は1988年8月25日付決定を考慮した。当該決定では、準備金を用いた増資において、適切な監査人により事後に作成された貸借対照表が、商業登記所が選任したのではない監査人により事前に作成された貸借対照表を修正する手段として認められた。貸借対照表が担う増資の現実性を保証する機能と株主に対する情報提供機能は、それにより十分に果たされていると考えられ、本決定の理由として「法的に可能であり、利害関係人のいずれにも害を及ぼさない範囲で、手続きの有効性を守り、相当の費用及び遅延を回避するという利便性」が示された。

 

ヴィラ法律事務所

 

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2022年10月14日