スペイン資本会社法の第109条は、社員持分の強制譲渡関し、以下の様々な条項を規定する。

(1) 第一に、ある社員の保有する社員持分または株式の差し押さえ(強制執行)に関し決定を下した裁判所または行政当局より通知を受けた場合、会社は商業登記簿に当該差押えを登記し、他の社員に直ちに前記通知受領を通知する義務がある。

(2) 第二に、債務者の競売が実行後、若しくは法的に決定された強制譲渡実行の事前に、管轄当局は本件競売売却承認および所有権移行を一時中止しなければならないと規定する。裁判所あるいは行政当局は、株式もしくは強制譲渡対象の持分の状況を会社通知すると同時に、最大5日以内に同状況を他の社員へ通知する義務を有する、とする。

(3) 最後に、前述の競売売却承認もしくは所有権譲渡は、会社の定款に定められている場合において社員もしくは会社自身が優先的取得権を行使しない限り、会社が前述の通知を受けた日から1カ月後に成立すると規定する。

しかしながら、スペイン有限会社であるLORCLIMA社は社員持分の強制譲渡において、前述の(2)に当たる手続きの停止に先立ち、持分優先的取得権に関しまず会社の権利を、その次に社員の権利についてスペイン資本会社法の第109条の内容から逸脱するようなシステムを確立する定款の変更を、マドリッド商業登記所に登記申請した。

登記官は、スペイン資本会社法の第109条は遵守義務条項であり、「手続きの開始時に優先的取得権を付与することは司法または行政手続き規則の変更を意味する」と主張し、両手続きは公の秩序にかかる問題として前述の会社定款変更登記を拒否した。

前述の登記拒否に対する上訴の後、最終的に登記・公証局は2019年5月23日付にて問題となった定款条項の登記を許可する決定を下した。スペイン資本会社法第109条によって確立された司法制度はすでに説明したような他の制度に変更可能な修正対象条項であるとし、その全てはスペイン資本会社法の第28条に規定する自由の原理に基づくとした。

 

 

ブランコ・ペドロ (Pedro Blanco)

ヴィラ法律事務所

 

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2019年6月14日