2016年12月31日、配当がない場合に株主に退社権を認める資本会社法第348条bis*の適用待機期間が終了した。
これにより、すべての株主による同意がある場合に株主の退社権を認める旨を定款に定めることができる(資本会社法第347条)ことに加え、その他の株主の退社権発生事由(資本会社法第346条)に上記が加えられることとなった。
法定の退社権発生事由
・ 会社の目的の重大な変更または修正
・ 会社の存続期間の延長
・ 会社の事業活動の再開
・ 付随的サービスの提供を実施する義務の新設、修正または事前の廃止(定款で禁止していない場合に限る)
・ 出資持分譲渡制度の修正(合同会社の場合)
・ 会社の債務について個人的な責任を負担させる効果を生じさせるような会社の組織変更(2009年4月3日法第3号商事会社の組織変更に関する法第15条)
・ 株主総会の承認を経て、国境をまたいだ、EU加盟国間の、または海外との合併等の結果、会社の本店所在地が他のEU加盟国へ移転する場合(2009年4月3日法第3号商事会社の組織変更に関する法第62条及び第99条)
2017年1月1日より、非上場の会社については、商業登記所に登記がされてから5年目の事業年度以降、会社が前事業年度において、その目的を実施することから得た利益の少なくとも3分の1について配当を実施することを株主総会が承認しない場合には、配当に関する議案に賛成票を投じた株主は、減資(資本会社法第358条)または、会社による当該株主の保有する株式の買い取り(資本会社法第359条)を通じて、退社をする権利を有することになる。
上記からもわかるように、この場合における株主の退社権の法的根拠は、資本会社法第346条に定める法定の退社権発生事由のように多数株主により会社契約の重要な部分を修正するような合意が形成されたことではなく、株主総会の決議で少数株主が利益を得ることへの参加及び少数株主の営利獲得についての潜在的遺留分を認めない結果となるような事態から少数株主を保護することにある。この場合、多数派によるそのような取り扱いは、会社契約の多数による契約不履行と理解される。
2017年1月1日以降、このような立場にある少数株主は株主総会が開催された日から1ヶ月の間、退社権を行使することができる(資本会社法第348条bis)。
当該株主が保有する出資持分または株式は、以下の方法に従いその価値の評価がされる。
1) 会社・当該株主間での出資持分または株式についての合理的な金額での合意
2) 合意がない場合には、独立した専門家により価値の評価がされる。当該専門家は会社または当該出資持分または株式を保有する株主からの要請により会社の本店所在地を管轄する商業登記所の登記官が選任される(資本会社法第353条)。評価価格については会社がそれを支払う(資本会社法第355条)。
しかし、償却された出資持分の価格(出資持分の返還に伴う減資により得られる価格)をすでに受領した合同会社の株主は、株主の退社が公的効力を有するよりも前に生じた会社の債務について、その受領した金額を上限として、第三者に対して会社と連帯して責任を負う(資本会社法第331条及び第332条に関連して、同法第357条)ことは考慮すべきだろう。
ビジャビセンシオ・カルラ (Carla Villavicencio)
ヴィラ法律事務所
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2017年1月13日
* 有効性に関する注記: 本条は2011年8月1日付法第25号資本会社法の一部改正及び欧州議会及び欧州評議会2007年7月11日付指令第36号(上場企業の株主の権利行使にかかる指令)の適用に関する法律によって設けられたものであり、2015年5月25日付法第9号倒産手続きにかかる緊急措置法及び2014年9月5日付勅令法第11号倒産手続きにかかる緊急措置法により、その適用が2016年12月31日まで延期されていた(それまでは2012年6月22日付法第1号資本会社の合併及び会社分割にかかる情報提供義務及び書類提供義務の簡易化に関する法律によって2014年12月31日まで適用が延期されていた)。