スペイン資本会社法(以下「資本会社法」という。)第317条によると、資本の減少(減資)は以下の目的の場合に可能とされる。

1) 会社の資本額と累積欠損の結果として減少した純資産とのバランス回復(貸借対照表の正常化)のため

2) 法定準備金や任意積立金の設定又は増額のため

3) 株主からの資金供与の返還のため

4) 株式会社(Sociedad Anónima)の場合は、上記のほか、未了部分の株式引受け義務を解消するため。

有限責任会社(Sociedad Limitada)の場合は、資本会社法第78条の条の規定により、会社設立(又は増資)の公正証書作成時に資本の全部について払込みがされていなければならないが、資本会社法は一方で、株式会社については、会社設立時点で株式額面価額の25%の払込みがされていることが要求されるのみである(資本会社法第79条以降)。

減資の方法は以下のいずれかによる。

a) 株式額面価額の減

b) 株式消却

c) 株式の集約

上記には3つの共通点がある。

(i) 減資は、会社定款変更の場合と同様、特別決議(資本会社法第318条)による株主総会決議で承認されなければならないこと。

(ii) 債権者保護。債権者は減資に異議を申し立てる権利を有すること。しかし減資の理由が下記のいずれかである場合には、債権者は異議申し立て権を有さない。会社の資本金と、累積欠損の結果として減少した純資産とのバランス回復を目的とする場合

– 法定準備金の積立や増額を目的とする場合(任意積立金は含まれない)

– 利益準備金や資本準備金の減額、又は自己株式の無償消却によって実施される場合

(iii) 減資のための要件と前提条件(資本会社法第318条以降の条項および商業登録規則第170条)が満たされていること。

2018年5月22日付登記・公証局(DGRN)の決定では、「会社は、登記簿上公示されている資本金額を、第三者保護のためにも、法によって規定される要件を満たすことなく減少することはできない」とした。(資本会社法第331条から第337条)

 当該ケースでは、ある有限会社(Sociedad Limitada)が、以前に株主総会で決議された減資を実施することを目的に、その対象となる自己株式を取得した(事前に自社株を取得し、その後株式消却による減資決議を行うのとは逆の順番。)。

株式の取得価額は額面価額よりはるかに低く、通常それは、会社に損失が存在することを意味する。

取締役は、減資の効力発生日に会社の負債はなかったとの証明を行った。したがって、準備金の引当を行う必要はないとした(資本会社法第141条及び第332条)。

しかし、商業登記官は、債権者保護の効力発生日が減資の決議がされた日の後であることを考慮すると、任意積立金や法廷準備金の設定又は損失に基づく減資の実施とすることが適切であるとして、本登記申請を拒否した。

登記・公証局は、登記官の拒否理由を支持することを確認した。

登記・公証局は、会社株式の価値の回復が減資決議の前後のいずれであるかにかかわらず、減資を実施することにより利益を享受する株主の共同責任(資本会社法第331条)の適用が可能であることを特に言及した。

また、各株主の共同責任は会社への投資額(保有株式の価値)に限定されていることから、出資の返還が会社株式の額面価額を下回る金額で実施され、その金額に減資額が含まれている場合には、その差額は、債権者保護がないがしろにされることを避けるために、(i)損失の補填(ⅱ)任意準備金の積立開始または増額(iii)消却された資本準備金の積立又は又は増額、のいずれかの方法によって整合されなければならない、と登記・公証局は結論づけた。

 

 

ヴィシャビセンシオ・カルラ (Carla Villavicencio)

ヴィラ法律事務所

 

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2018年6月22日