2019年4月3日付登記・公証局(DGRN)の決定において、定款で株主総会の決議要件の定款による修正の可否が問題となった。
本件においては、ある合同会社(S.L.) の株主総会において、以下の定款変更が採決された。
「株主総会決議要件:株主総会の決議は、少なくとも80%以上の会社の株式を代表する株主による議決権の過半数による。白紙票は有効票としてカウントしない。」
上記定款変更の内容について登記申請が行なわれたが、登記官は、以下の理由に基づき、登記申請を却下した。
「少なくとも80%以上の会社株式を代表する株主による議決権」を一般決議要件とするような修正を行うと、もしこれを明確化しない場合には、資本会社法で普通決議が求められる事項についても含まれることが明らかであり、したがって、上記のような修正を行うことはできない。
これに対して会社から異議申し立てが行われた。
登記・公証局は、これは合同会社にかかる規定のいくつかの局面における法の強行法規性と定款自治の範囲の問題とし、以下の見解を述べた。
合同会社の基本理念の一つとして、個人主義と資本主義のハイブリッド形態であること、さらに、株主の意思に基づく自治のために、法の適用は柔軟であるべき、というものがある。そのため、法の強行法規としての適用は最小限に抑えられるべきである、というのが原則である。
資本主義の側面として、合同会社は株主総会の決議において過半数の原則が定められている。加えて、強制力のある株主総会の普通決議、特別決議の要件が法で定められている(資本会社法198条及び199条)。これらの最低要件を、大多数(80%)という大幅に厳格化するような定款変更は、法適用の柔軟性という観点から可能か、という点が問題となる。
例えば、合同会社の法定解散事由に基づく解散決議の場合、法は普通決議によるものと定めており、株主の個別の権利に影響を及ぼすような修正を定款で行うことはできない。このため、登記・公証局は「法が決議要件を定めている場合にはそれを強化するような修正を行う定款変更を行うことはできない」と解釈してきた。
したがい、法の定めるいかなる決議要件についても定款の規定が優先するという議論は受け入れがたい。実際、法は、例えば定款変更のように、特別決議を要請する議案を特定している。本件においては、法の定める特別決議を要する場合の要件を考慮することなく、また、株主の権利保護についても配慮がされていないと評価せざるを得ない。
上記の理由から、本件の異議申し立ては却下された。
露木美加
ヴィラ法律事務所
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2019年5月17日