スペイン資本会社法に定める一般原則では、会社の業務執行機関の会議、もしくは社員/株主の会議は、構成員または代理人の出席によって開催される、としている。しかし「出席」という用語は、明示的には示さずとも、物理的な出席を意図するように推測される。

上記は、会社資本法第182条が例外的に株式会社及び株主総会の場合に言及し、出席者の身元が保証可能であることを条件に、株主が電磁的方法を用いての(具体的手段の明示なく)株主総会への出席を承認していることからも確認できる。加えて、法律は上記方法による出席が、会社の定款に規定されていることを要求する。株式会社の条件や制限を考慮すると、立法者は当該条文を例外措置として規定したと理解すべきである。ある株主がオンライン参加することは、株主総会への物理的な出席のメリットを損なうものではない。当該措置は、健全な総会運営のためにより多くの株主の出席が必須であるにもかかわらず、出席不可能な株主が多数存在する会社をサポートすることを目的としている。純粋には第182条の条文は、株主総会のオンライン開催を定めるのではなく、従来の株主総会への株主のオンライン参加を規定している。

他方会社資本法には、取締役会開催に関し同様の方式についての言及はないが、このような空白の存在のために、規制のための条文の制定の実現可能性を考える必要がある。

スペイン資本会社法が制定された2010年当時の通信・遠隔接続の状況を考慮すると、このような立法の柔弱さは、時代錯誤であるとも言えよう。どこにいても接続可能となった今日、この問題が会社資本法の歴代の改正で採択されなかったのは驚くべきことである。パラドックスではあるが、会社資本法第173条は、株主総会の招集通知を会社のホームページに掲載することで総会を開催可能とすると定めている。そのため、会社経営の利益を考慮する上で是正すべきこの分野には、一定の不均衡が存在することとなる。

社員/株主総会及び取締役会も含む業務執行機関会議の分散的・電磁的開催についての法制定を支持する理由は多くある。第一に、法律には当該方法による開催可能性についての言及はないため公式にではないが、会社は長年に渡りビデオ会議によって取締役会を開催してきたことを実務は示している。電磁的方法での株主総会開催を可能とすれば、旅費の削減、スケジュールの柔軟化を可能とし、社員/株主(及び役員)の積極的な参加を促進する。上記は、一般原則としての会議開催はバーチャルであるべきであると規定するのではない。しかしこのような技術上の解決は、結果として会議開催を容易にする様々な可能性を提供し、会社にとって明白な利益となる。

新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックに関連し、2020年3月14日に公布された非常事態宣言関連の政府が発表した措置の1つは、自宅での隔離である。当該措置を含む勅令は、年次会計書類作成のための取締役会や、計算書類の承認や重要な決議のための株主/社員総会が多く開催される時期に制定された。自宅隔離の強制は、これらの機関、特に取締役会の開催の多くに麻痺状態を生じさせたことにより、緊急の措置を講じる必要があった。そこで、3月17日の勅令第8/2020号において(当該記事を執筆時点では、施行中となる)、会社の定款には明示的な記載はなくとも、非常事態宣言発令中は、取締役会や株主総会のオンライン開催(複数の電話会議若しくはビデオ会議による)が認められることとなった。この場合、オンライン会議開催は原則に対する例外ではなく、むしろ非常事態宣言下であることにより、当該状態継続中に開催される会議に関しては、当該開催方法が既定のフォーミュラとなった。

オンライン会議開催のためには、どのような要件を満たすべきか?

(a) 技術的な手段としては、テレビ会議または複数の電話会議であること

(b) 出席者全員が会議出席のために必要な技術的手段を持っていること。

(c) 書記役は、出席者全員の身元を確認しなければならない

(d) 書記役は、総会もしくは会議が終了後即時、議事録を参加者に送付しなければならない

いかなる場合も、オンライン上で開催された総会もしくは会議は、会社の登記本店住所で開催されたものとみなされる。

立法者は、応急措置として生み出された故に、当該適用は非常事態宣言発令中に限定され、暫定的なものであることを宣言する。「スペインにおいて恒久、唯一のものは、暫定的なものである」という表現は、通常、即興の否定的な意味合いを有するが、最終的に当該措置が会社関連の規制に適切に組み込まれることとなれば、この機会に望ましい効果をもたらす可能性がある。当該フォーミュラは概念的に有効且つ時代に則した措置であり、特に取締役会に関して言えば、執行機関のより良い組織化に貢献する。会社資本法第245条は、少なくとも四半期ごとに1回の取締役会開催を義務付けるが、世界各地に散在する役員の現実とは実務的には相容れない。電磁的方法での会議開催は当該状況に解決策を与え、さらに、取締役会を物理的に開催せずに議事録が作成される状態にも解決策を与える。これは現実と法の調和、及び厄介な問題からの解放を意味する。

勅令法第8/2020号第40条の条文が少し唐突であるため、当該措置の実行時に現場にて疑問や問題が生じていることにも言及すべきであろう。疑問の一つは、出席者の身元確認のシステムにあり、特に取締役会では非常に重要な機密事項が議論、決定されるために特別な配慮を要する。第三者によるなりすましや不正な介入は、深刻な結果を招く可能性がある。このようなリスクと不確実性が存在するために、顔認証や、取締役会の出席者が個別に強要なしに出席していることの合理的な検証が物理的に不可能な、電話による多人数会議の実施は好ましくないと考える。株主総会または取締役会の書記役に法により課せられた任務遂行は、不可能もしくは非常に困難である。特に、株主間及び会社役員間の関係が良好でない場合、不正行為が適時に発見された場合、会議自体が無効になったり、開催が無効と判断されたりする。

もう一つの疑問は、このバーチャルな取締役会開催形式が、業務執行機関にも適用されるのか、それとも取締役会にのみ限定されるのかということがある。

また、取締役会での守秘義務の確保についての懸念が存在する。バーチャル会議への無許可な第三者の受動的な介入は、経営戦略計画や企業秘密などの機密情報や専有情報の漏洩につながる可能性がある。会議中の第三者による不要な介入(「ハッキング」)のリスクを減らすために、セキュリティ対策は必須となる。法律は、出席者特定の重要性を説くが、会議開催のセキュリティについては言及がない。

バーチャルシステムでは、上記リスク軽減若しくは排除のために、デジタル署名認証を利用して、株主総会または取締役への安全なアクセスゲートウェイの使用を義務付けるなど、一定の技術的サポートを要する。これは、出席者特定義務における、立法者が規定する書記役の過剰な責任の一部を軽減するものとなろう。しかし当該権限の遂行の際の、デューデリジェンスの基準はどこにあるのかという疑問も生ずる。

議事録の送付についても同様のことが言える。勅令法第8/2020号は、書記役が会議終了後直ちに各出席者に電子メールで議事録を送付することに言及する。内容暗号化の必要性を確認するか、もしくは暗号化及び制限されたアクセス方法で、社員/株主が会社のウェブサイト上にて議事録の内容を参照できるようにすることが望ましい。

最後に、取締役会及び株主総会をオンライン開催する方式が最終的に会社法制化されるのであれば、出席者の身元、自発的且つ個人的な参加、および自由意志を最大限いかした権利行使の条件に特に留意し、合理的な安全性と機密性を提供することを目的とした技術的支援やパラメータを伴う必要がある。その逆は、不正行為や紛争につながり、この解決策によって得られることを意図した利益とは逆の効果をもたらす可能性がある。

 

 

ヴィラ・エドアルド (Eduardo Vilá)

ヴィラ法律事務所

 

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2020年5月29日