ある合同会社(Sociedad Limitada)の取締役は、会社に生じた利益の全てを資本準備金にするとの利益処分案を株主総会に提案した。当該提案は承認可決されたが、株主の一人が、当該利益について配当に回し、資本準備金に回す金額は多くても利益の半分にしたいとして、反対票を投じた。当該株主は会社に対して資本会社法第348条に従って少数株主の退社権の行使の通知をし、当該通知において、自身が保有する株式の価値評価を目的とする株主総会の開催を要請した。当該株主は上記通知を繰り返し行ったが会社から回答を得られなかったため、資本会社法に定められている商業登記所を通じた手続きを開始すると告げた。

このことが会社に通知されると、会社の取締役は当該株主の要請に対して異議を申し立てたが、商業登記官は会社の異議を認めず、商業登記規則第363条に従って、株式の価値評価のための鑑定人を選任する旨の決定を行った。

上記商業登記官の決定について、会社は登記・公証局(DGRN)に対し不服申立てを提出した。

DGRNは2018年3月13日付の決定において、会社の主張内容を以下の3つに分類した。

(1) 株主の退社権の根拠について管轄を有するのは裁判所であり、商業登記官ではない。

(2) 株主の退社権について株主総会は何の宣告も行なっていない。

(3) 本件株主の退社権行使は脱法行為であるのではないかとの疑念を抱いている。

そのうえで、DGRNは各主張についての見解を述べ、最終的には会社の主張を認めなかった。

上記主張のうち株主総会の事前の宣告についてDGRNは、最高裁判所判例によれば、株主の退社権の行使は、法がその行使の可能性を認めている株主に独占的に帰属するものであるとした。そして、株主による退社権の行使に先立って、株主総会や取締役会からの承認をする必要がなく、当該権利の行使について会社に通知がされれば、資本会社法第353条及びそれに続く条項の定めるところに従い、その効力が発生すると示した。つまり、株主の退社権行使は、株主総会や経営組織の事前の決定や審議に条件付けられるものではなく、株主総会が合意したところに従わなければならないものでもないと結論づけた。

 

 

大友 美加

ヴィラ法律事務所

 

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2018年6月15日