資本会社法第86条第1項によれば、スペインの資本会社は、定款で株主の付随的義務を定めることができる。

2018年6月26日付登記・公証局決定が出されたケースでは、スペインの合同会社の株主が、定款変更について満場一致で可決した。当該定款変更によれば、家族関係を有する者に該当する株主についてのみ、家族株主の取り決めにて合意されたところにしたがって無償で株主の付随的義務を課すとされ、その旨が公正証書に記載された。

当該公正証書は登記のために商業登記所に提出がされたが、登記官は、株主の付随的給付を定める定款の規定が、株主の付随的給付の具体的かつ明確な内容を要請する資本会社法第86条に反することを理由に、登記を認めなかった。そのため、異議申し立てがなされた。

登記・公証局は、まず家族株主の取り決めについては、学説・実務の双方において認められていることを確認した。

その後、資本会社法第86条は株主の付随的義務の「具体的かつ明確な内容」という表現を用いて、当該義務の基本的な特徴を定款で定めることを要求しているとし、その内容を特定するにあたって特別な厳格さの必要性は軽減されるとした。関係者間の関係の明確性及び安定性を確保するために、付随的義務を行う際の基本条件又は基準を定めることは必要となる。そして、民法1271条以降の条文を考慮すると、当事者間で新たに合意を結ぶ必要がない程度に条件が定められている限り、ある一定範囲について未確定であることを認めていると結論づけた。したがって、絶対的かつ全体的に条件や決定が定まっている場合のみならず主要又は大半が定まっている場合も許容されるが、後者の場合には当事者間で新たに合意を行う必要がない程度に基準が定められていなければならない。

本件においては、本件株主の付随的義務は公正証書において完全に特定されており、株主の付随的義務の全体の内容は定款の範囲外で、内容の予測可能な程度に定款で定められており、現在の株主のみならず将来の株主によっても付随的義務の条件や内容を確認されることができると評価された。

結果として、登記・公証局は問題となっていた定款規定について登記可能と判断した。

 

 

大友 美加

ヴィラ法律事務所

 

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2018年7月27日