引受済未払込株式による減資

本稿では、法的安全及び公共の利益管理局(Dirección General de Seguridad Jurídica y Fe Pública)の2021年3月30日付決定の内容を検討する。

当該異議申し立ての目的を理解するためには、本事案の背景を明確にする必要があるだろう。簡潔に説明すると、本事案において、あるスペイン株式会社(S.A.)が、増資のための株式発行条件として、引受時に額面の25%の払込み、残りの払込みは15年以内と定めた。新規発行株式は1名の株主がすべて引き受け、2年後に、会社の経営機関により払込み未了の部分についての払込みが要求されたが、実施されなかった。当該状況に際し、当該会社の一人取締役は、資本会社法第84条に則り、当該会社の株式について公募を行うことを決定したが、これは失敗に終わった。その結果、第84条第2項後段、「株式の売却が実行することができない場合には、当該株式は償却され、それに続いて減資がされるものとする。なお、既に払込みがされた額については、会社の利益として残る。 にしたがい、減資が実行された。

商業登記所にて減資にかかる公正証書が提出された際、登記官は、瑕疵の中でもとりわけ、無償で取得した自己株式の償却制度について定めた資本会社法第335条cの要件を充足することの要否に関する点に大きく着目した。

同条は、減資が利益又は自主的資本準備金を用いて行われる場合、または、無償で取得した自己株式の償却によって行われる場合には、債権者は当該減資に異議を申し立てることができない旨を定めている。本事案では、償却された株式の額面価額又は当該株式の額面価額の減少額について、準備金に割り当てなければならず、減資と同じ要件を満たすことによって実行可能である。しかしながら、本事案では、いかなる種類の準備金も形成されていない。

登記官が主張する規制の適用の可否検討の判断基準となるのは、会社が以前に、取得後償却の対象となる株式を無償で取得したかどうかである。登記官の決定に異議申し立てがされた本事案において、公正証書を作成した公証人は、本件は自己株式の償却の問題ではない、そして会社はこれまで自己株式を有償でも無償でも取得したことがないと主張した。公証人によれば、本件は「義務不履行により、会社に明確な損害を与えた株主を排除するために法が用意した特別な手続きであり、損失又は発行済み株式の取り消しによる減資に類似するものと考えるべき」である。

株式の取得に関して、法的安全及び公共の利益管理局は減資の直前において会社は、払込みの原則が守られている株式に関しては、会社が無償で自己株式を所有しているとした。そして、それらの償却は会社資産の処分を意味するのではなく、会計上会社資本に割り当てられた資金の引き出しであり、それを行うためには減資と同じ要件が適用される。

反対に、当管理局は、上述の資本会社法第84条の前提事実は、会社が保有していない株式について払込みがされないことであり、したがって、それを無償で取得することは難しいと続けたことは興味深い。さらに、これは継続的な払込み(額面価額の75%が払込み未了)であるため、最初の払込みは、どの種類の固定資産にも該当しない特別準備金に付随することなく、会社の利益として残る、とした。

管理局は、同法第84条は売却の試みが失敗したために行われる減資の義務的な性質を定めることに限定され、また、資本会社法第335Cと第84条の異なる規制を分ける相違点を考慮すると、本事案で記載される前提条件の不一致は同じ制度の対象とならないとして、異議申し立てを認め、登記官の登記申請拒否の判断を取消した。しかしながら、同管理局は、本事案についての解決策については、沈黙を守ったままであった。ただし、登記官の決定を取消すことによって、資本会社法第335条Cによって求められる準備金の形成は必要ではないことを認め、減資と同様の要件及び手続きを参照しているように思われる。

マデロ・ハイメ (Jaime Madero)

ヴィラ法律事務所

 

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va@vila.es

 

2021年5月14日

2021-05-14T13:49:45+00:0014/05/2021|会社法|

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