法第25/2011号による改正がされる前、スペイン資本会社法第348条bisは、以下のように定めていた。

「会社が商業登記所に登記されてから5期目以降、会社が前事業年度中に事業活動から得た法的に配当可能な利益の少なくとも3分の1について配当を行うことにつき、株主総会の決議がされない場合には、利益処分として配当に賛成票を投じた株主は退社権を行使することができる。」

最高裁判所民事第1法廷は2020年12月10日付判決第663/2020号にて、上記条文についての解釈を示した。本事案において、株主総会議事録で法が求める退社権を行使しようとした株主の明確な利益処分案への賛成票の投票を確認することができなかった。当該株主は、利益を資本準備金へ割り当てる旨の議案について、配当を希望することを理由として反対票を投じている。

最高裁は、当時の資本会社法第348条bisの条文の記載にかかわらず、退社権の行使をしようとした株主が明確に配当について賛成票を投じた事実の存在は求められない、との見解を示した。

処分可能利益を資本準備金へ割り当てるというシステマチックな株主総会決議によって繰り返し行われる無配当に対する方法を少数株主は有しているという教訓である。すなわち、2011年12月7日付最高裁はんけつ第873/2011号のいうところの「大株主の専制国家」における少数株主に与えられた道具といえる。そして、権利行使のために、法はいくつかの要件を設けており、その中には、株主が過半数株主の計画に反対票を投じることが含まれている。したがって、資本会社法第348条bisの条文の記載は別として、配当金の分配についての賛成票を投じることと、利益を配当以外の目的に割り当てることについて反対票を投じることに、大きな違いはない。

本事案において、地方高等裁判所は、退社権を行使しようとした株主は、利益を資本準備金へ割り当てる旨の議案について、配当を希望することを理由として反対票を投じたことが証明されたとしている。したがって、株主総会において、利益処分の方法として、配当金の分配を希望する明確な意思の宣言がされたと評価することができ、これは、良くも悪くも、当時の資本会社法第348条bisの条文原文が述べている内容である。そして、このことは、「配当を行うことにつき、株主総会の決議がされない」と言う、条文の文言を裏付けている。

なお、2018年12月28日付法第11/2018号によって第348条bisは修正され、現在は以下の規定内容となっており、少数株主の退社権の行使要件であった配当へ賛成票を投じていることが、「配当が不足していることについて異議を申し立てたことが議事録に記載されていること」と修正された。

“株主総会議事録にて、配当が不十分であることに対する異議を申し立てたことが確認できる株主は、株主総会が、少なくとも前事業年度の配当可能利益の25%を配当することについて賛成決議を行わない場合に、退社権を有するものとする。ただし、直近3事業年度において利益を得ている場合に限る。”

 

 

露木 美加

ヴィラ法律事務所

 

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2021年1月29日