2020年10月14日付法的安全及び公示力管理局(DGSJFP)決定は、バルセロナ商業登記所登記官によって却下された登記申請についての異議申し立てを解決するものである。当該登記申請は、株式会社(S.A.)の株主総会決議にかかる公正証書の内容を登記するものであった。

I. 前提事実

2020年5月2日付に開催された株式会社の株主総会にて、一人取締役を、2018年7月1日を始期として、定款で定める任期である5年間の再任を承認した。(上記日付は、当該一人取締役の従前の任期が終了した日であるが、法律上取締役不在であった期間も、当該一人取締役が継続して会社の経営を行っていた。)同様に、前の任期終了以降に一人取締役が実施したすべての行為について承認がされた。

上記決議は、2020年6月19日付にて公正証書化がされた。

登記官は当該公正証書について、再任が2020年5月2日で行われている以上、取締役の選任はその日以降効力が発生しているものと理解され、選任の効力は遡及しないとして、登記を却下した。

上記株主総会決議にかかる公正証書を作成した公証人は、この登記官の登記却下の判断について、以下を主張し、異議を申し立てた。

(i) 遡及的選任について明確に禁じられていない。

(ii) 異議申立ての対象となる登記官の判断は、会社の取締役の代表権限の無制限及び商事及び会社法務における第三者保護という周知の一般原則に反する

II. DGSJFPの決定

DGSJFPは本件異議申立てを認めず、登記官の登記却下の判断を支持した。その法的根拠は以下のとおりである。

a) スペイン資本会社法は、株式会社の取締役は定款に定める任期期間中にその任務を実行するとし、任期は6年を超えることはできないと規定する(資本会社法第221条第2項 第1号)。

b) 取締役の任期が年数にて定められている場合(本件では5年間)、取締役の選任の効力は任期満了後に行われる株主総会開催日又は直近の事業年度の計算書類の承認を行う株主総会の開催期間を経過した日をもって終了する(資本会社法第222条)。

c) DGSJFPは取締役の任期の計算は、選任日を「現状のまま(dies a quo)」と考えるべきであって、議事録の承認がされた日でも、就任承諾の日でもないとの決定をしている。

d) 取締役の選任や再任は明示的でなければならない(資本会社法第214条、商業登記規則第138条、141条、142条、144条)

e) 取締役の再任は、役職の継続的就任が想定される場合であっても、一度退任することが暗黙の了解として存在している。したがって、任期延長ではなく、その他の選任と同じ要件を遵守した上での新たな選任と考えるべきである。

f) 取締役の選任を行う株主総会は、定款に定める取締役の任期を下回る任期を定めることはできない。

これらはすべて、取締役の任期満了(2018年7月1日)からその再任(2020年5月2日)の期間に当該取締役によって実施されたすべての行為を承認した株主総会決議の登記によって保護されない領域において得られる可能性のある有効性とは関係がないことを追記する。

 

ヴィシャビセンシオ・カルラ (Carla Villavicencio)

ヴィラ法律事務所

 

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2021年2月5日