地方高等裁判所及び公証・登記局は今日までの判決、決定において、資本会社の取締役の報酬に関し、二つの異なる制度が存在するという姿勢を示してきた。これは以下のように解釈されていた。

    1. 取締役の報酬に関する規定である資本会社法(Ley de Sociedades de Capital)第217条は、取締役の機能、つまり意思決定や監督業務にかかる報酬についてのみ言及している。
    2. 取締役会の権限委譲に関する規定である資本会社法第249条は、執行権者の機能、つまり、会社の通常業務にかかる報酬についてのみ言及している。

取締役に対する二重の報酬システムによって、取締役の報酬は定款自治の範囲に委ねられていると理解されており、従って、報酬の上限金額は株主総会による承認の対象である一方、当該報酬の制限は代表取締役の執行権機能への報酬に影響を及ぼさないため、特別決議による承認は取締役会によって行われ、株主総会の承認対象とされていなかった。

2015年9月10日付、バルセロナ商事裁判所第9法廷に、商業登記所の登記拒否についての異議申し立てが提起された。拒否された登記項目は以下である。

取締役の職務は無報酬とする。ただし、取締役会が存在する場合、取締役会によって執行取締役の執行権限の行使について必要と認める場合には、株主総会の承認も、定款における報酬に関する特別な規定がなくとも、資本会社法第249条第2項の規定の適用による。

上記条項にしたがえば、代表取締役の執行取締役としての報酬は、定款自治も株主総会の承認も必要とせず、前述の報酬制度の二重性を継続することになる。

しかしながら商業登記所は、定款自治の原則を侵害していることを理由に条項の登記を拒否した。原告の主張を退けた第一審の判決を不服とし、控訴した第二審では第一審の判決を覆し原告の主張を認められた。登記官はこれを不服とし、本件を上告した。2018年2月26日付最高裁判所判決第98/2018号は、以下の論旨に基づき、前述の報酬の二重構造性を否定した。

  1. 本二重構造は「執行取締役の報酬の透明性を著しく損ない、株主の権利、特に少数株主の権利に悪影響を及ぼす」なぜなら、取締役の報酬決定における株主総会の重要な役割を制限することになるためである。
  2. 代表取締役の報酬が一番重要になるのは、取締役会の設置時である。従って、会社の定款自治の適用がされず、さらに資本会社法第217条第4項に規定する要件、つまり、取締役の報酬の比例性原則も適用されるというのは合理的ではない。
  3. 取締役という役職には、審議・監督役としての権限とともに、執行役としての権限も付与されており、それらの権限の区別を要さない。
  4. 取締役を選任する場合、一人あるいは数人のメンバーへの執行権限の委譲を行うが、しかしながら、これらの権限は、すべての取締役もしくは、彼らの権限の「委任」を決定する取締役会に固有のものであり、よって、取締役の業務に差異はなく、それ自体の規制が必要となる。
  5. 資本会社法第217条は、取締役もしくは委任型執行役員かによって差別的に適用すべきではなく、同時に、資本会社法第218及び9条も、全ての代表取締役の報酬に適用できると理解する。

a) 両方の条項は第217条項およびその解釈と密接に関連しているため、第218条および第219条が取締役の報酬制度に適用可能である場合、第217条もまた適用されるべきである。

b) 両条項において定款自治の要件が参照として反復されているため、資本会社法第217条も、これを規定する。

取締役の報酬システムの統一の結果として、執行取締役への報酬の分配の際には、以下の点に留意する必要がある。

  1. 定款には、無償もしくは報酬の出る役職について明記し、同時に、役職概念に基づいて決定する報酬システムを設定する。
  2. 非上場会社においては株主総会の決定により取締役の年間報酬の上限額を定める。資本会社法第249条第4項IIおよび第249条補足i.規定に従い、多数の合意をもっての採決を損なうことなく開催する。
  3. 異なる権限を有する取締役間の報酬の分配は、合意により決定する。取締役会において決定する場合、各役員の権限及び責任を考慮しこれを決定する。

結論としては、執行取締役の報酬は、定款自治に従うものであり、従って、定款において規定された限度内である必要があり、その報酬額は、株主総会で毎年承認される必要がある。

 

 

ブランコ・ペドロ (Pedro Blanco)

ヴィラ法律事務所

 

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2018年3月9日