I. 導入

例年のように、12月末決算の会社が年次会計報告書を作成・承認を求める時期になったが、それに伴って決算結果の適用に関し、新たな疑問が生じている。

本稿では、会社が決算結果の適用方法として行う剰余金の配当に関して生ずる実務的問題を取り扱う。

II. 剰余金配当の上限額

スペインの資本会社法(LSC: Ley de Sociedades de Capital)第273条は配当可能額の上限について以下のように規定している。

a) 法定準備金を備えていること。

法定準備金の額が少なくとも資本金の20%に到達するまで、当該事業年度における利益の少なくとも10%を法定準備金として積み立てなければならない。

b) 定款に定められている任意準備金を備えていること。この場合、以下に挙げる要件を満たさなければならない。

c) 剰余金配当の結果、純資産の価値が資本金額を下回らないこと。

d) 準備金の総額が、貸借対照表の資産の部に記載される研究開発費の額と同額以上であること。

上記に挙げる要件を満たしていれば、株主に対し利益を還元する方法として、剰余金の配当を行うことに支障はない。

III. 前年度までに累積損失がある場合における配当可能額の制限

会社が累積損失を有しているという事実自体が、剰余金の配当を妨げることはない。

資本会社法第273条第2項によれば、剰余金配当の結果、純資産の額が資本金の額を下回らない限り、剰余金配当は可能であると規定する。

しかしながら、過去の事業年度からの累積損失の存在により会社の純資産額が資本金の額をすでに下回っている場合、利益を同損失の補填にあてなければならない。

したがって、累積損失が存在する場合、剰余金配当の前後ともにおいて、純資産額が資本金と同額又は上回っていることを確認する必要がある。

IV. 債務超過であっても、剰余金配当は可能か

原則としては会社の決算で利益が出でいる場合のみ、剰余金の配当は行われると理解すべきであるが、(II)で示したように、資本会社法第273条第2項においての一定の制限はあるものの、自由に用いることができる準備金から配当金を拠出することが認められている。

実際には、株主総会で任意準備金を用いた配当と、任意準備金の制限に関する定款条項の修正に合意すれば、任意準備金を用いた配当を行うことは可能である。

V. 剰余金配当に関する義務が存在するか

資本会社法第93条a)によると、株主は会社の利益配当を受ける権利を有するとしている。しかしながら、同法は決算値の適用時の株主総会の決定権限に、何らの規定を設けてはいない。(同法第160条a, 及び第273条第1項)

非上場株式会社の場合、同法第348条bisは、商業登記所に登記がされてから5年目の事業年度以降、法による剰余金の配当が可能な利益のうち少なくとも3分の1についての剰余金配当の実施を株式総会が承認しない場合、当該剰余金配当に賛成票を投じた株主の退社権を認めている(当事務所2017年1月の記事参照)。

VI. 年次計算書類を承認する前に、剰余金配当を実施することは可能か

可能である。当該事業年度における利益を剰余金配当という形で分配するほか、当該事業年度の決算が確定する前に株主に剰余金を配当することも可能である。子会社が、債務超過状態にありながらも流動性があるとされ、その100%親会社に対して剰余金配当が認められた興味深い事例がある。

なお、資本会社法第277条は以下の点を要件としている。

a) 取締役が中間配当を行うための十分な流動性があることの宣言を含む計算書を作成すること(上記計算書はその後当該事業年度の計算書類注記表に含まれなければならない。)

b) 中間配当金の金額が、直近事業年度終了時以降の結果、直近事業年度で生じた損失、法定準備金又は任意準備金に組み込まなければならない金額、及び当該事業年度の結果にかかる見込み課税額を超えないこと。

VII. 剰余金配当又は中間配当の決定権及び配当金額の決定権は誰が有するか

承認がされた貸借対照表に従って事業年度の結果の適用として剰余金配当について決定する権限を有するのは、株主総会のみである(資本会社法第273条第1項)。

他方、中間配当については、株主総会又は上述VIに記載の要件を満たした場合には取締役によって決定されることができる(資本会社法第277条)。

VIII. 剰余金配当又は中間配当の時期及び方法

剰余金配当に関する株主総会の合意は、(i)計算書類承認及び(ii)決算結果の適用に関する決議が行われる株主総会の議事録に記録される。

資本会社法第276条の定めるところに従い、当該株主総会決議において株主総会は配当の時期及び配当の支払い方法について定める。この決定が欠ける場合、配当金は、株主総会決議がされた翌日以降、会社の本店所在地において、現金で支払われると理解される。

また、中間配当が決定された場合で、株主総会議事録又は取締役会議事録において時期や支払い方法が明らかにされていない場合もまた、上記の類推適用により、当該決議がされた翌日以降、会社の本店所在地において現金で支払われる。

 

 

ヴィシャビセンシオ・カルラ (Carla Villavicencio)

ヴィラ法律事務所

 

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2018年3月2日