取締役に選任前、もしくは選任された直後に最もよくある質問の一つには、会社債務に対する取締役責任がある。
スペイン資本会社法第367条は、取締役が同法第365条に定める条件で会社解散のための行動を起こさなかった場合には、同法第363条に定める解散事由のいずれかが発生後に生じた会社債務の連帯責任を負うと定めている。
上記に関連して、スペイン資本会社法第367条は、会社解散事由の発生前に存在していたという会社債務についての推定を定める。従って、責任を追求された取締役は、会社債務が解散事由発生以前のものであることを証明する責任を負う。
しかしながら、当該責任規定は、結果的に、会社解散事由発生前に債務が存在したという証明を債権者が行うことを前提としている。これは、取締役の行為責任を訴追するのは債権者であり、根拠となる事実が事前に証明されていない場合、訴追を行うのは不可能であるからである。
会社の年次計算書類を未提出であることは、損失による法定解散状況という取締役責任が自動的に生じるような、確固とした推定を構成するかという、合理的な疑問が生じる。過去のスペイン最高裁判所判決では、これを否定している。商業登記所に会社の年次計算書類を未提出である事実は、会社の赤字状況を示すが、未提出であることが会社債務に対する責任を決定するものではない。そのためには、例えば、事業所の閉鎖や、債務の継続した不払い等解散事由を示す、もしくは示唆する他の状況が伴うことが不可欠であるとした。債権者は、これらの会社の事情を認識したとしても、計算書類が未提出であれば、商業登記所に赴き会社の計算書類を閲覧する等の適切な措置を講じることができず、その結果、法的解散の状況にあるか、ある場合はいつからかを確認することができない。
直近2024年2月27日付最高裁判所判決は、このような見解を支持し、年次計算書類が未提出であったことと発生した損害との間に因果関係がなければならないと主張している。
判決は、年次計算書類提出義務を不履行な場合、会社商業登記簿の閉鎖、及び、制裁措置の適用という二つの影響を受けるが、それ自体が解散の法的事由を構成せず、加えて、会社債務に対する取締責任も生じないとした。2024年2月27日判決では、計算書類の未提出は、会社の財政赤字、もしくは事業活動の実行がないことを証明するために考慮されうる事実ではあるが、会社の経営機能麻痺や会社目的の遂行が不可能であることを推定することはできない、と結ばれていた。このようなケースでは、立証責任は逆転する。財政不均衡がないことの証明義務を負うのは被告である取締役となる。従って、取締役が数年分の年次決算の提出義務を順守せず、会社が法定解散状況にないことを証明できない場合、取締役は会社の債務について個人的かつ連帯的に責任を負うことになる。
資本会社法第367条に定める企業債務に対する行動責任の時効消滅については、2023年10月31日付、2024年2月20日および2024年2月27日付の判決は、同法第241条には規定する時効期間(4年)ではないとした。同条で示す4年という期間は、個人及びコーポレイト行為に関してのみ適用されるものであり、異なる前提、異なる性質のものと言える。また、後者の2つは発生した損害に対応するためのものである。他方、第367条関連の訴訟は、第三者の債務に対する法的責任追求にかかる訴訟である。したがって 債務に対する責任訴訟は、被担保債務と同様の時効期間となる。いずれにせよ、スペイン商法第949条に定める4年の時効期間は、同法に定めるパートナーシップ(Sociedades personalistas)にのみ適用され、株式・持分有権会社(Sociedades de capital)には適用されない。最後に、訴訟時効の中断については、民法第1973条及び第1974条が適用されることとなる。
ヴィラ・エドアルド (Eduardo Vilá)
ヴィラ法律事務所
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2024年3月28日