登記・公証局は2017年1月18日付の決定において、会社が法定の期間内に法により登記が求められている事項についてその登記申請義務を果たさない場合には、その不履行により生じ得るリスクについては当該会社が甘受すべきとの判断を示した。

本件では、合同会社(S.L.)が経営組織の変更、取締役の辞任及び一人取締役の選任についての公正証書について、商業登記所登記官が、該当会社の登記記録に備考欄によれば、法人税法の定める法人登録(税務当局の管理する法人登録簿の登録)が抹消されている(この登録抹消は3税務期間連続して納税しない場合等に行われる)ことが確認できることを理由に、その登記手続きを認めなかった。この備考欄の記載が有効である以上、 裁判所による命令がある場合、または、行政による法人の再登録が行われない限り、新たな登記手続きを行うことができないことは、登記・公証局も認めるところである。

この取扱いに対し、会社の法人取締役2社のそれぞれ代表者は、以下の点を主張し、異議を申し立てた。

  • 税務当局の命令に基づく登記記録の閉鎖とその原因となった納税義務の不履行は一人取締役の辞任よりも後に生じている。
  • 取締役または職務執行者の辞任の登記がされないと、辞任した取締役が無防備な状態となってしまう。

これらの主張に対して、登記・公証局は以下の見解を示した。

まず、登記・公証局の法人税法第131条第2項に関する見解は、ある会社が、税務当局の管理する法人登録簿への登録が一時的に抹消されている場合には、法人登録簿の再登録がされるまでは、当該会社の登記簿は実質的に全体が閉鎖されるとしていることを確認し、この見解は現在においてもなお有効であるとした。

この見解に従えば、税務当局管理の法人登録簿の登録が一時的に抹消されている間は、定められた例外的な場合を除いて、商業登記簿へのアクセスもできないという結論となる。

次に、本件における取締役の辞任が、税務当局管理法人登録簿の登録抹消が商業登記簿の備考欄に記入されるよりも前に生じているとの主張については、以下の理由により、認められないとした。

  • 登記手続きのために公正証書が提出された時点において、既に税務当局管理の法人登録簿の登録抹消がされており、登記官はそれを無視することはできないこと。
  • 資本会社法第215条第2項によれば、取締役の選任については商業登記所への登記申請は就任承諾がされてから10日以内にされなければならない。もし実行されないのであれば、当該義務の不履行から生じる不利益な結果については、当該登記義務を実施すべき者が甘受するべきである。

結果として、登記・公証局は会社による異議の申立てを却下し、登記官の決定を指示した。

上記から、登記実務においては、登記申請が法定期間内にされていない場合は、事実の先後関係ではなく、登記申請がされた時点における登記簿の状態が優先されると理解できる。つまり、登記申請が法の定める期間内に提出されていない結果、会社にとって不利益な取り扱いが生じたとしても、それは会社の責任であるというのがDGRNの見解であると考えてよいだろう。

 

 

大友 美加

ヴィラ法律事務所

 

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2017年2月24日