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スペイン最高裁判所は、マンション管理(住民)組合が建物内でツーリストアパート(民泊)の運営を禁ずる措置の採択を容易にする判決を下した。

背景

スペインにおけるツーリスト向け住宅利用数は、この種の賃貸を促進するデジタル・プラットフォームの人気を背景に、過去10年で顕著な成長を遂げた。当該現象は不動産市場に強いインパクトを与えている。一方では、定住を目的とした賃貸物件の供給が減少し、結果として、一般的な家賃相場の上昇を引き起こしている。他方では、以前は地元民を対象とした店が多く存在していたが住宅地区から観光業や飲食業を中心とした商業地区への変貌といった、都市モデルの変化も引き起こすことになった。

このような変化は、民泊施設の所有者とマンション自治会との間に公然の対立を生じている。民泊事業に反対する人々は、騒音に対する苦情、治安の悪化、居住環境の乱れなどを懸念の一部としてあげる。しかし、マンション管理組合がこの種の行為を禁止、もしくは制限をすることできる法的根拠については、法律や法的見解が不明確である。現時点では、マンション管理規約の変更、あるいは特定多数決による決議採択といった2つの主要メカニズムが存在する。後者については最高裁判所判決が存在せず、法的見解の統一が図られていないため、本稿では前者に焦点を当てることにする。

マンション管理規約の変更

管理組合はいつの時点においても管理規約を修正し、民泊事業行為を明示的に禁止することを選択できるが、この変更合意には全会一致を必要とするため、すでに問題対立がある場合の変更実現は不可能である。加えて、民泊事業行為はここ最近の現象であるため、管理組合設立時のマンション管理規約に当該関連規定を設けているケースはほとんどない。

しかしながら、多くの管理組合は、管理規約に他の種類の活動の制限を定めている。具体的には、住宅のオフィス、事務所利用の禁止、つまり経済活動や専門職業的活動の実行を禁ずる建物、もしくは、「専用住宅」をうたう建物は多く存在する。このため、当該問題に関するここに述べる最高裁判所の直近判決には、特に重要な意味がある。

最高裁は、ツーリストアパート運営を経済活動と判断

2023年11月27日付最高裁判決第5197/2023号及び2023年11月29日付最高裁判決第 5199/2023号の2つの直近の判決において、スペイン最高裁判所民事部は、ツーリストを対象とした住居の賃貸は、法的には経済活動に該当するとの見解を示した。

上記判決のうち第1の案件は、オビエド県内のある住民組合が、民泊利用に対する拒否権を求めて上訴したケースであった。管理組合規約は、建物は「専用住宅」であり、「いかなる種類の専門的、事業的、商業的、営利的活動」も行ってはならないと定めていた。最高裁判所は、住民組合を支持し、ツーリストを対象とする住居の賃貸活動は、「ビジネスおよび商業的な性質」を有し、居住には該当しないと見なし、民泊行為の中止を命じた。

第二の判決では、サン・セバスチャンにおいて、数人の区分所有者が管理組合を相手取って「住宅での経済活動の実施」を禁ずる管理規約の条文の無効を求めて訴訟を起こした。最高裁判所は前記と同様の結論に達し、管理規約による禁止は明確であり、ツーリストを対象とした住居の賃貸活動は経済活動であるとして、その活動の停止を命じた。

同法廷は、2016年7月28日付観光に関する法律第13/2016号において、ツーリスト用の宿泊施設は、既に「事業利用」の単一性の原則の下で管理される「活動」を構成する、と定義されていることを示した。さらに、民泊は「一時的な滞在(宿泊)」が目的で、宿泊者の住居変更を伴わないとし、定住を目的とする住宅とは区別している、とした。

したがって、第一に、ツーリスト利用目的の宿泊施設の賃貸活動には、「商業的、専門的もしくは事業的」要素がある限り、つまり金銭的対価との交換を活動目的としている限り、経済活動の一般的範疇に含まれるとした。第二に、判決文の文言「住宅以外の利用」によると、民泊の用途は、居住ではないとの判断が、明確にされた。しかしながら、これらの判決が下されるまでは、ツーリスト用の住宅利用が居住用とみなされるか否かについて、高等裁判所間で見解の相違があった。

結論として、最高裁は、経済活動目的による住居の使用を管理規約で禁止している、もしくはその用途を居住専用と限定している管理組合では、特定の用途(民泊事業運営)の禁止について管理規約に明示的に言及する必要はなく、その運営の拒否権を有すことを支持した。

スペイン区分所有法

前述のように、管理組合による民泊運営の制限を可能とする、もう一つのメカニズムが存在する。具体的には、区分所有法第17条第12項は、区分所有者総数の5分の3以上の賛成によって、管理組合がツーリストを対象とした活動を「制限もしくは条件付ける」ことを可能とすることを定めている。しかしながら、問題解決のために立法者によって導入された当該仕組みは、現在のところ解決よりむしろ多くの疑念の生ずる原因となっている。

まず、当該条文の文言が、例にもれず、明瞭ではない。特に、活動を禁止する権限が明示的に定められていない。また、場合によっては全会一致を要するのかも不明である。その結果、統一された見解の不在により、スペインの各州の高等裁判所間で矛盾した解釈が見受けられる。事実、既述の二つの最高裁判決の中で、裁判所は、これらの判決は区分所有法の解釈に関する疑問を解決するものではないとの警告をしている。

しかし、この点に関する基準の統一がなされるのは、そう遠くない将来であると思われる。そして、当該基準は、ツーリストを対象とした住宅の賃貸活動に適用される法律の包括的な解釈に解決策を与えることになろう。その日が来るまで、スペインにおける民泊は、多くの問題、訴訟、上訴を生み続けることになろう。

 

 

フリオ・ゴンサレス (Julio González)

ヴィラ法律事務所

 

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2024年1月5日