2023年5月24日付法第12/2023号「住宅享受権に関する法律」(同年5月26日施行)は、財産権から派生する権限を制限するものであり、すべての不動産所有者、特に大量の住宅物件を所有する「大口オーナー」の利益を害するものであると言える。

当該法律が課す多くの制限は、以下を根拠としている。

a. スペイン憲法第47条は、すべてのスペイン人に適切・適正な住居を享受する権利を認め、公権力に対して、当該権利行使の平等と憲法上の義務の遵守を保証するために必要な環境を促進し、当該権利の有効性のための適切な規範を制定する義務を課している。

b. 住宅業界で事業を営む会社の財産権及び営業の自由は、スペイン国内のいかなる地域においてもスペイン国民が平等であるという枠組みの中において、社会的機能を果たさなければならず、公共の利益に配慮しなければならない。

当該法律制定でもっとも影響を受けるのは大口オーナーであり、これは都市部に10件以上の居住用不動産を保有、または、1500平方メートル以上の建ぺい率(いかなる場合も駐車場および物置き部分は除かれる)を有する居住用不動産を保有する自然人または法人と定義されている。

しかしながら、住宅マーケット環境が逼迫している場合には、各自治州の要請により、正当な報告書による裏付けがあるのであれば、前記の定義は当該地域にある居住用不動産を5件以上所有する自然人又は法人にまで拡大することができる。

住宅市場逼迫地域とは、地域の多様なニーズに応じて、住宅市場にアクセスするにあたり手頃な条件での住宅供給が不足しているというリスクが、突出して存在する地域をいう。

したがって、居住用不動産の売買または賃貸において、特に市場逼迫地域では、大口オーナーは、以下の義務の遵守を強いられることになるため、特に負担を被ることとなる。

  • 所有不動産に関する情報を行政に提供し、協力する義務。要請日の1年前の時点における、不動産所有者の個人情報、利用形態、所有者としての義務遵守の証明に関する点の情報を提供しなければならない。
  • 居住用不動産の売買、または賃貸の場合において、買主及び賃借人に提供しなければならない最低限の情報(特に、当該不動産が市場逼迫地域に存在する旨、直近過去5年間の最終有効賃貸料、該当物件に適用される住宅賃貸料参考指数に基づく賃貸料の表示)
  • 大口オーナーではない不動産所有者の場合、新規賃貸料は、法定更新を適用したのちに、直近過去5年間の最終有効賃貸料を超えてはならないが、特定のケースでは(改修、改良工事を実行した場合、10年以上の契約期間、10年以上の更新期間の可能性)に限り、最大10%まで増額することができる。
  • 大口オーナーの場合、新規賃貸料は、賃貸マンションの部屋や建物の条件や特性を考慮した上で、住宅賃貸料参考指数制度に従って適用される価格の上限を超えてはならない。
  • 不動産会社への報酬、契約実行費用はオーナーが負担する。
  • – 2023年中は賃貸借料の最高更新率を2%まで、2024年中は3%までとし、2025年1月1日付で国家統計院(Instituto Nacional de Estadística)が新制度を制定する。
  • 法が定める強制的又は黙示的な賃貸契約延長期間の満了後、賃借人側の希望により、最長3年までの年単位の臨時延長に応じる。
  • 賃料支払いは、電子的手段で実行する必要がある。例外的に、当事者の一方が銀行口座を持たない場合、または電子的手段を利用できない場合に限り、要請がある場合は、賃借住居において現金での支払いを認めている。
  • 不動産が占拠者の常居所であり、占拠者が経済的に困窮する状況にある場合には、事前調停手続きによること。
  • 賃料滞納を理由とする立ち退き訴訟において、被告となる賃借人が経済的に困窮する状況にあるかどうかを、定められた法的要件に従って特定、証明する義務。
  • 明渡しの前の行政の対応の遅れへの忍耐

結論として、当該法律が不動産オーナーに課す複数の義務を鑑みると、導入された不動産所有権の制限的効果を緩和するための最も適切な条項を、施行日である2023526日以降に発効するすべての賃貸借契約において予見することが不可欠となる。

 

ボスク・ミレイア (Mireia Bosch)

ヴィラ法律事務所

 

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2023年6月23日