直近2025年9月2日付スペイン最高裁判所の判決第3808/2025号は、集合住宅における区分所有者らの管理組合(以下「管理組合」)内における観光客用短期賃貸(以下、「民泊」という)規制に関し判例上の指標を示すこととなった。最高裁は、長年にわたる司法・法理上の見解の相違、論争を経て、民泊の禁止も含む制限、条件付与のための管理組合総会決議の範囲を明確にし、本件案件発生時点で施行中であった区分所有法第17条12項解釈に関する判例を確立した。本判決は、近隣住民との共生、適用規制への影響を考慮すると、管理組合だけでなく、民泊を運営する個人にとってもとりわけ重要な意味を持つ。
要件事実の発生と裁判プロセス
本件訴訟は、セゴビア県内の集合住宅のある所有者らが、2019年1月付管理組合総会決議に対する異議申立てを裁判所に提起したことに発端する。物件所有者、および区分所有権者の5分の3の賛成によって承認された当該決議は、建物内での民泊運営を明示的に禁止するものであった。原告側は、区分所有法第17条12項(勅令法第21/2018号において導入された一時的特例規定)の文言によれば、集合住宅における観光客用短期賃貸の制限または条件付を可能とするが、禁止は不可能である。故に、本決議は無効と宣言されるべきであると主張した。当該裁判は3審制を経て進展した。つまり第1審裁判所は原告を支持し決議を無効としたが、第2審の高等裁判所は第1審を覆す判断を示し、最終的に事件は上告審として最高裁に至った。
法的根拠
本判決の争点は、勅令法第21/2018号による改正後に導入され、その後勅令法第7/2019号による改正で再確認された区分所有法第17条12項の解釈にあった。上告人は、5分の3以上の絶対多数の賛成は、民泊運営の制限、もしくはまたは条件付ける権限を与えるが、禁止の権限を与えるものではないと反論した。しかし最高裁判所はこの限定的な見解を否定し、2024年10月3日付判決第1232/2024号および第1233/2024号における先行判例を引用した上で、「制限」という表現には活動の禁止も含まれると判示した。文法、文字通りの意味、そして字義的基準や目的を考慮すると、区分所有法に定める「制限」という表現は、過半数以上の賛成により、住宅の観光客賃貸利用禁止決定する可能性を排除するものではないと結論づけた。ただし、過半数の要件が法的に満たされ、遡及的な効力を適用しないことが条件であるとした。
当該法理は、区分所有法第17条12項改正のための2025年基本法第1/2025号において立法府に採用された。これにより、管理組合総会における全会一致を要件とせずに、前述の絶対多数(5分の3以上)により、民泊運営に対し制限、条件付与、または禁止決議の採択が可能となった。全会一致を要件とすると、民泊運営を希望する一所有者の反対票のみで管理組合の意思の阻害を可能とし、いかなる制限をも不可能とするからである。
実務上の適用
本判決は、管理組合が、所有者及び区分所有権総数の5分の3以上の賛成による決議により、建物内での民泊運営を制限あるいは条件付けるだけでなく、禁止をも可能とすることを明確にした。当該決議は、遡及効力を有せず、現行の業界規制に従う既民泊運営者の既得権を尊重する限り、有効かつ有効であるとされる。したがって、所有物件を民泊用賃貸へと検討する者は、禁止決議が採択される以前に関連規制に従ってすでにその活動を行っていた場合を除き、事前に管理組合の明示的な同意を得なければならない。
同様に、本判決は、特に共有施設の集中利用や、近隣住民の安全及び平穏な生活を脅かすような潜在的に紛争の種となる可能性のある活動に対し、住民の共生に関する決定機関として、管理組合の役割を強化するものである。
住宅危機との関係性
現在スペインでは、多くの都市や観光地で深刻な住宅不足が問題となっている中、民泊の急増が住宅供給の減少と賃貸、売買価格の高騰に大きな影響を与えていると言われている。様々な調査研究や行政機関は、居住住宅を短期滞在用宿泊施設とのような非居住住宅に転用することが不動産市場に緊張をもたらし、幅広い層の地元住民が居住住宅にアクセス困難な状況を作り出しているという点で一致している。
本状況下にて、直近の最高裁判決は、管理組合が規定半数の賛成により、民泊活動の制限もしくは条件付与だけでなく、禁止決議を採択できる可能性を確立した点で、とりわけ重要なものであるといえよう。区分所有法によって保護され、勅令法第7/2019号による法改正によって強化された当該権限は、特に住宅需要が逼迫している地域において、観光客用賃貸よりも常居所用賃貸を促進し、不動産物件の住宅利用バランスを取戻すための重要な法的手段として位置付けられる。最高裁判所判例は、所有者に対し資産の経済的活用に関する正当な権利を認める一方で、スペイン憲法で認める適切な居住を得る権利の保護、近隣住民との共生の維持、オーバーツーリズムによる悪影響に対する効果的な対策を求める社会および自治体の高まる要求に応える必要性を強調している。結果として、本解釈は、集合住宅管理組合に、民泊が与える社会的影響を緩和するための効果的な法的手段を提供し、住宅の社会的機能と都市・居住環境の保護を保証する役割を強化するものである。
主影響、及び提言
本判決の見解から、以下に挙げるよう実務上の帰結を導くことができる。
- すべての管理組合は、建物内での民泊禁止に関する議題を、5分の3以上の賛成による絶対多数で決議採択することができ、この決議は将来的に適用される。
- 民泊運営を希望する住宅物件所有者は、既に運営を法的に認められていた場合除き、事前に、管理組合の明示的な許可を得る必要がある。
- 採択された決議は、現行法に基づき既に当該活動を行っていた者に対して遡及的に適用することはできず、当該権利は区分所有法第2追加規定により保護される。
- 管理組合の事前許可なしに民泊運営が行われている場合、管理組合は直ちにその中止を要求し、住民集団の利益保護のために必要な法的措置を講じる権利を有する。
故に、住宅の民泊運営利用を計画する所有者は、常に管理組合の規制状況を確認し、必要な許可を申請することが推奨される。また、管理組合は、区分所有法および現行の判例法の要件に従い、組合定款、もしくは管理組合総会議事録に、適用制度を詳細に定めるが要求される。
結論
本最高裁判決第3808/2025号は、管理組合5分の3以上の多数の賛成で、民泊運営禁止を決議する権限に関する決定的な解釈を示した。これは近隣住民の共生を保証するとともに、住宅物件所有者及び観光事業者にとってより大きな法的安定性をもたらすものである。
民泊について利害関係者となる管理組合、および民泊運営に関心のある所有者は、規制および判例の動向を踏まえ、専門的なリーガルアドバイスを受けた上で、所有不動産の個別状況および法的対応の可能性を検討することが推奨される。
シャミン・ハニフ (Shameem Hanif)
ヴィラ法律事務所
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2025年10月10日