暗号通貨の性質に関する問いは、特に暗号通貨が通貨あるいは貨幣のいずれかであるとみなす必要がある場合は、学説上の議論及び膠着した姿勢の対象となってきた。スペイン最高裁判所はある刑事事件判決において、この問いに対し暗号通貨は有形物ではなく、また法定通貨とみなすこともできない、との他のヨーロッパ諸国の判例に追随する見解を示した。

上記2019年6月20日付判決は、ある数人の小規模投資家が、各自が保有するビットコインの運用に関しある運営会社との間に高頻度取引契約を締結し、本件会社は手数料を支払う代わりに、配当金がある場合は再投資を行い、全利益を契約満期に支払うとしたケースについての判断を示したものである。高頻度取引契約(HFT)とは、金融市場情報をテクノロジー利用よって獲得しながら、プログラムされたアルゴリズムによって高速、高頻度で自動売買を繰り返す売買取引を指す。本件は、上記契約の終了時に、本運用会社が何かしらの配当金を投資家に分配しなかったことに発する。被害を受けた投資家たちは、これは詐欺及び横領にあたるとして、本運営会社を告発した。

本記事における我々の関心は、本運用会社が意図的に義務を不履行したかではなく、民事的な問題、つまり、本運用会社の投資家に対する資産・負債の所在にある。投資家は、ビットコイン購入のために運営会社に初期投資した法定通貨を損失したため、投資した法定通貨ではなく、ビットコインで賠償するよう請求したのである。注目すべき点は、投資家達はビットコインを運営会社に預入れたのではなく、ビットコインに交換するための法定通貨を預入れたことである。したがって、運営会社が本件高頻度取引契約を遵守せず、契約終了時に預入金が未返金で、投資家が財産的被害を被ったと容易に判断できるとしても、運営会社の詐欺行為の結果として本来返却されるべきビットコインを搾取されたとは主張できないのである。

最高裁判所は暗号通貨の性質に関し、ビットコインは有形物ではなく、また法定通貨とみなされてもいないため、返却不可能であると判断している。それどころか、ビットコインは、非公開ではあるが2100万台の「同名のネットワーク網のアカウント単位」で「確立されたコンピューターネットワークを通して分割可能な方法で取引されている」と定義した。

本最高裁判所判決は、ビットコインとは、「ビットコイン」と名付けられたコンピューター及び暗号化技術により成立するアカウント単位の形をとる無形資産であると結論づけた。アカウント単位の価値はビットコイン取引が実行されるプラットフォームにおける需要と供給により決定されるため、単一的、もしくは統一的な価格を有しない。その結果、ビットコインだけではなく他の暗号通貨に考察を広げてみると、最高裁判所は、契約両当事者により適切に容認された、あらゆる取引時に補償または両替可能な無形資産として扱うが、従来の通貨や貨幣でもなく、ましてや電子マネーでもないとの見解を示した。電子マネーは電子的または磁気的方法により管理される貨幣価値として定義されるが、 (i)発行人に対するクレジットを表象していること、(ii)支払実行を目的とした資金を提供後発行されること、(iii)発行人ではない自然人または法人が受領すること、という条件を満たす必要がある。アナログの通貨でも電子的マネーでもないビットコインは、動産(法定通貨も含む)またはサービスと交換可能な変動価値を有する無形資産として分類するしかなかろう。

先に述べたように最高裁判所は、投資家に対しビットコインによる賠償支払いは不可能であり、投資額(法定通貨による)に本件契約開始から終了時までに受領したであろうビットコインの利益を損害額として加算した総額を支払うことで当該損害を賠償するものと結論づけた。

 

 

エドアルド・ヴィラ (Eduardo Vilá)

ヴィラ法律事務所

 

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2020年1月10日