今年の12月3日に施行される2018年2月28日付欧州議会及び欧州委員会規則第2018/302号は、利用者の国籍、居住地や顧客の施設の所在地を理由とした商人又は会社による地理的その他差別的な封鎖を防止することを目的とした一連の対策について規定している。
取引を希望する他の加盟国の顧客に対して、商人が不合理な態様でそのホームページやアプリケーションへのアクセスをブロックしたり制限したりすることが実務上存在することは、周知のことである。これを「 ジオブロッキング(地理的封鎖)」という。また、商品販売又はサービス提供の一般的条件が環境に応じて異なる場合にも、同じ状況が生じる。本規則は、原則としてこの実務の取り扱いを禁じるものであるが、絶対的に禁ずるものではない。客観的に正当な理由(商人が所在するEU加盟国の法の規定等も含む。)が存在する場合、上記状況は容認可能だからである。
本規則は、総括的な効力を備えるものではなく、したがって、取引の要素が一つのEU加盟国に限定されるような内部の状況には適用されない。また、金融、保険、コミュニケーション、医療衛生等、欧州指令第2006/123号で定められるその他サービスの提供活動にも適用がされない。
具体的には、本規則に含まれる商人への禁止事項は4つの基本的な内容に集約される。
a) オンライン・インターフェイスへのアクセス: 顧客の国籍、居住地又は顧客の施設の所在地に関連したことを根拠として、商人は、クライアントが自身のオンライン・インターフェイスへアクセスすることを、テクノロジーその他の種類を用いてブロック又は制限することができない。また、顧客がアクセスをしようとしたものとは異なるインターフェイスへと転送することもできない。ただし、顧客が別インターフェイスへの転送について明白な同意をする場合には例外とされる。この同意がどのようになされるか、及び、どのような形で顧客がこのオプションの存在を認識すべきかについて、本規則は特に具体的にしていない。
b) 商品及びサービスへのアクセス: 上述の原因により、商人はその商品又はサービスへのアクセスに関する一般的な条件を適用することはできない。この禁止は、特に商品の購入、著作権で保護された作品へのアクセス及び利用を含まないオンライン・サービスの受領、及び商人がその事業活動を行う加盟国領域内の施設におけるオンラインサービス提供に適用される。本規則のこの条項は一つ例外を含んでいる。「特定の領域」又は、差別的な態様ではない「特定のグループ」の顧客に対して措置が取られる場合である。しかし、これらの例外が「差別的」といった形容詞と「特定のグループ」という不明確な用語を結びつけているため、例外が適用されるかの決定は当該禁止の範囲と許される活動と禁じられる活動の境界線についての疑義を生むことになるだろう。
c) 支払いに関する理由による非差別: 商人は、国籍、居住地又は顧客施設の所在地に関連した理由、又は、送金元の銀行口座の所在地、支払いサービスプロバイダの所在地、又は、EU 域内の支払い手段の発行地に関連した理由により、支払いに際して異なる支払い条件を適用することができない。しかし、この指令は「客観的な理由により正当化された」ケースには適用されず、この場合商人は、支払いが正しく行われたことを確認するまで、商品の引き渡しやサービス提供を遅らせることができる。この点、立法者は18の法的概念を定義しているにも関わらず、「客観的理由」をどのように解釈すべきかについて、具体的に述べることも、的確な手がかりを与えることもしないというミスを犯している。また、本規則は商人に対してカードを支払い手段として利用することで生じる費用をチャージすることを認めている。当該交換手数料は欧州規則第2015/751号には規定されていない。仮想資産又は仮想通貨による支払いの場合に、商人が合法に異なる支払い条件を設けることができるのかは明らかにされていない。なぜなら、本規則は「通貨」という、仮想資産又は仮想通貨による支払い手段が技術的に含まれなかった時代の現代商法の、不十分かつ時代遅れである用語を用いているからである。
d) 受動的販売に関する合意: 本規則は、上記a)b)及びc)における禁止の範囲外の取引での規則第330/2010号に定める積極的販売と受動的販売を制限する合意には影響を及ぼさない。他方、受動的販売に関しては、商人に対して当該禁止に反する行為を義務付けるような合意は法的に無効となる。
本規則は各加盟国が本規則の適切かつ効果的な実施を行うための組織の指定及び違反があった場合に課せられる措置に関する規則の制定をする旨定めている。当該措置は「効果的で相応かつ思い留まらせる」ような内容でなければならない。それ以外の目的で規定を設けることは想像できないため、この用語は重複のように思える。
欧州委員会は本規則が欧州内およびクロスボーダーのEコマースに与えうる相当な影響と実務的適用性について認識しており、それゆえに、本規則の効果をモニターするための一時的なマイルストーンを定めている。欧州委員会は当該事項についての定期的な報告書を作成しなければならず、初回報告書は2020年3月23日以前に、以降は5年ごとに公表される。この報告書は、本規則の一部修正がある可能性もふまえ、欧州議会及び経済社会部会に提出される。
最後に、本規則は、非常によく意図されてはいるがとても深くまでは検討されていないルールとして提示された。つまり、用語のいくつかは曖昧さを残し、例外についての規定は加盟国によって異なる解釈がされる可能性がある。究極的には、経済のプレイヤー間での混乱や法的安定性の欠如、又は本規則自身が提示しているような一時的に深刻化した不安定性を招く可能性もある。
ヴィラ・エドアルド (Eduardo Vilá)
ヴィラ法律事務所
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2018年11月16日