「ロボット」という定義は時間と共に進化してきた。伝統的にはデジタル革命が起こるまでは、ある限定的な任務や作業を人間がプログラムした指示に従い実行することが可能な、才知に長けた機械という理解がなされていた。

今日、上記定義は部分的には正しいが、不十分であるといえよう。従来のロボットの概念と現在の概念の大きな相違は、今日の最新式かつ洗練されたロボットは、ロボット自身が数式とアルゴリズムに従って直面する状況に応じて決断を行うことにある。この例として、自動運転車両が加速、減速、停止、障害を避けるタイミングを決定したり、人身事故か物損事故を引き起こしたのかを判別したりする事が挙げられる。これら一連の決断には、人間の意志が直接介入することなく、事前にプログラムされた指示に従い絶え間なく自動的になされる。更に一歩踏み込んで、人工知能が組み込まれているロボットを、人間に類似した知覚、感知、識別、決定方法が適用されていると理解することにについて考察しよう。こう理解すると、人工知能を装備したロボットは、状況に応じて行動パターンを生成するために、自身の経験や提供される事例に基づき「学習する」能力を備えていると言える。当該経験的かつ統計的システムにより、ロボットは異なる可能性の中から「識別」をし、一つを選択することを可能する。このプロセスに人工知能をプログラムした人間は参加しない。人工知能はまた、人間の感情に非常に近いが(今のところ)倫理的および道徳的要素を欠く「抽象的」な能力をも備えている。要約すると、人工知能はロボットが自身で学習すること及び、非常に自発的・独立的にともいえる形で決定することを可能とし、これは人間の「自由意思」と同等にも見なすことができる独立性の特徴を示す。

法的又は倫理的実体とは、権利と義務を持つ一個人と定義され、それは一人以上の自然人によって形成されたものとして存在する。「知的」ロボットは一法人としての性質を備えているが、根本的に機械とその所有者又はプログラマーとの間の独立した属性のために法人の定義には則さない。知的ロボットは、

  • 自発的なエネルギー供給を享受できる。言い換えると、自給自足と自己修復機能を有する。
  • 行動能力を有する。
  • 自身で決断することができる

おそらく数年のうちに、初期プログラミングの指示に基づいて、自由意思および倫理的に識別すると能力を有する人工知能を備えたヒューマノイドが登場するであろう。彼らが人間とは異なる性質を有することにより、自然人としての地位を獲得出来ないことは明確である。

しかし、ヒューマノイド又は知的ロボットのこれらの特質は、彼らを定義する際に法的問題を提起する。というのも、自然人でも法人でもないながらも人間とほぼ同様の方法で決定や識別したりすることができ、所有者及びプログラマーから独立して行動することもできるため、資産や単純な機械として識別することもできない。結果的に我々は、ヒューマノイド又は知的ロボットは固有の法的地位と権利と義務を有する「機械人間」または「人間機械」という新しい概念を作り出す方向に向かうであろう。

通常ヒューマノイドとは、人間に共通した特徴でもある可動性と相互作用の機能を有した知的存在であり、人の役に立つために存在していると考えられている。根底では、ヒューマノイドは現代の奴隷の一種ともいえ、歴史のある特定の時期に存在した自然人の奴隷と同様であると言える。しかし、人間の奴隷が識別力と自由意思をもって自身の主人に反抗・行動したのと同様に、ロボット奴隷も人間に類似した人工知能を授けられていれば、自身の主人の指示に反抗、無視したりすることに至る可能性がある。今のところロボットの寿命と行動は所有者によって特定されているが、知的ロボットが初期プログラミングにて規定された枠組みから外れ(たとえそれが基盤にあろうとも)、所有者から独立して自身の決断によって行動するようになれば、一般に社会や特に商品交易で実現される行動は法的帰結を持たなければならないであろう。

知的ロボットはそれほど遠くない将来、日々の社会、労働、そして商業的な関係に組み込まれることが求められている。そしてこの機械対人間の間の相互作用は、人間とロボットの間に権利と義務を生み出すこととなる。例えば、一般的なプログラミングの枠組みの中で、知的ロボットは所有者のあずかり知らぬところで所有者の厳密な指示に関係なく他のロボットとオンライン契約を結ぶに至る。こうした独立した行為が、単にロボットに責任を持つ自然人又は法人の責任の領域にあるかどうかを考慮する必要が出てこよう。本行為は、商業的要因のひとつまたは委任者の責任と受容することができるだろうか。現在のところ人工知能を有するロボットの能力は、大半の人間に及ばないが、能力が人間に追いつくのは時間の問題である。とすると、知的ロボットはで自然人や法人とは異なる「機械人間」の立場を取得するべきである。

さらにその行動が単なる指令や基本的にプログラムされた目的に対応する時に、しかしその行為がロボットによって作成されたアルゴリズム計算に基づいてもしくは、プログラマーや所有者から独立した、自身の学習能力のプロセスのおかげで行われた場合、権利と義務を付与することができるかどうかを考察する必要があろう。

 

 

ヴィラ・エドアルド (Eduardo Vilá)

ヴィラ法律事務所

 

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2018年12月21日